ベテランが持つノウハウ・コツなどの伝えにくい知識や知恵を、言語化・図像化する

暗黙知見える化の具体的手法と、その技術承継・共有、ナレッジマネジメントへの応用
―開発・設計プロセスにおける事例を中心として―

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セミナー概要
略称
暗黙知見える化
セミナーNo.
141022
開催日時
2014年10月24日(金) 10:30~16:30
主催
(株)R&D支援センター
問い合わせ
Tel:03-5857-4811 E-mail:info@rdsc.co.jp 問い合わせフォーム
開催場所
江東区産業会館 第5展示室
価格
非会員:  50,906円 (本体価格:46,278円)
会員:  48,125円 (本体価格:43,750円)
学生:  11,000円 (本体価格:10,000円)
価格関連備考
会員(案内)登録していただいた場合、通常1名様申込で49,980円(税込)から
 ★1名で申込の場合、47,250円(税込)へ割引になります。
 ★2名同時申込で両名とも会員登録をしていただいた場合、計49,980円(2人目無料)です。
学校関係者価格は、企業に在籍されている研究員の方には適用されません。
定員
30名 ※現在、お申込み可能です。満席になり次第、募集を終了させていただきます。
備考
昼食・資料付き
講座の内容
習得できる知識
(1)暗黙知とはどのようなものであるか
(2)暗黙知はどのようにすれば見える化できるか
(3)組織で行う技術承継や共有、ナレッジマネジメントに対し、暗黙知見える化法をどのように適用すれば、技術承継・共有やナレッジマネジメントで求められている価値ある知識資産を活用できるか
(4)知識資産の共有に関する社員の意識改革、知識資産を見える化する仕組みの社内構築、知識資産の承継・共有による人材早期育成体制の確立は、どうすれば実現できるか
趣旨
(1)私は弁理士です。30年以上、日本を代表する大企業(NEC)を始め、多くの中小企業やベンチャー企業((株)ザイキューブ)の特許を取るお手伝いをしてきました。その間ずっと、「その状況で力の限りを尽くす」というポリシーで仕事をしてきましたので、クライアントには高い評価をいただき、やりがい、達成感も感じてきましたが、最近は「無力感」の方が大きくなっていました。その理由は、苦労して良い特許をとっても、それが直接的に企業の業績改善につながらないからです。相当のお金をかけて特許を採ったのに、です。
 そうこうしているうちに、最近、あることに気づきました。
 「そうだ。特許を取るのは、あくまで事業の役に立てるため、競争優位を得るためだ。だが、特許が事業の役に立つかどうかは、他社動向、経済状況等の周囲の状況に左右され、自社の意思だけでは決まらない。きわめて流動的だ。それなら、周囲の状況に左右されず、自社の意思だけで高確率で成果が見込めることやる方がいいんじゃないか。決して特許の重要性を否定するわけではないが・・・・。」
 それは、「仕事を通じて個人の頭や身体の中に培われてきた暗黙知を引き出し、それを言語化・体系化して組織知に転換する」ということです。
 特に、暗黙知の「本質」とも言える「判断」に焦点を当てて、これを見える化することができれば、多くの社員が利用しやすく価値の高い組織知に転換できるのでは、と思うからです。
(2)今回企画したのは、暗黙知見える化の具体的手法をお伝えするセミナーです。ここで言っている「暗黙知」は、個人が持つノウハウ、コツ、強み、教訓、経験といったもので、言葉では伝えられない、あるいは、非常に伝えにくい知識や知恵のことです。
 個人(特に優秀社員)の頭の中にある暗黙知を引き出して見える化できれば、「技術や知識の属人性」という大きな問題がなくなり、技術や知識を「組織の資産」にできますから、熟練技術の流出(消失)防止、若手・中堅社員の能力(スキル)向上、日常業務の効率化等、多くの成果が期待できます。特許を取るよりも、企業の業績向上に直接的にかつ高確率で貢献できるわけです。これが暗黙知見える化による第一のベネフィットです。
 暗黙知見える化による第二のベネフィットは、何よりも自信がもてることです。社長(部門長)だけでなく、社員も自信を持てるようになるのです。
 「俺の会社、けっこう良いモノを持っているじゃないか」
 「私にはこんな能力があったんだ」
というように。
 これは、特に中小企業について言えることですね。
 また、暗黙知を提供した人は、暗黙知見える化プロセスを通じて、無意識でやっていた自分の思考法に気づくことができます。その結果、自分のノウハウや強みの改善・拡張が容易になり、ノウハウや強みのいっそうの価値向上が期待できます。これは、特に、暗黙知の開示を積極的には望まない優秀社員に暗黙知見える化を承諾してもらう理由でもあります。
 しかし、優秀社員からの暗黙知提供をいっそう容易化するには、これとは別に、企業が何らかの報酬を与える(例えば給与・昇進に反映させる)ことが必要だと思います。
 第三のベネフィットは、「熟練技術の承継・共有」問題の解決です。熟練技術の承継や共有が難しい原因の一つは、
「伝えたくても伝えられない。」(熟練者は伝えるコトバを持っていない)
「教わりたくても教われない。」(若手社員は教わるための背景知識を持っていない)
ということにあります。
 他の一つは、熟練者自身、自分の暗黙知が持っている価値に気づきにくいと言うことです。
 暗黙知見える化法を知って実施することで、この難しい問題の解決も期待できるようになります。
 これら以外には、「特許取得プロセスが効率的になる」という第四のベネフィットと、「特許をどのように事業で使えば事業に好影響を与えられるかを明確に判断できる」という第五のベネフィットもあります。
(3)しかし、「暗黙知を見える化する」というのは難しいことです。しかも、「暗黙知の本質を取り出してそれを上位概念化し、さらに体系化する」というのは、本当に、「言うは易く行うは難し」です。
 暗黙知は、それを持っている本人でさえ無意識で行っている部分や直観で判断している部分が多いため、ある行為をする際に、自分がどのように考え判断しているかを人に説明できません。特に、暗黙知を持っている本人が、暗黙知の対象を自分の眼や耳や手でどのように知覚しているかを言葉で伝えるのは、非常に難しいでしょう。
 しかし、発明者や相談者との面談(インタビュー)を数百回経験し、それに基づいて数千件の発明という無形のアイデアを言語化・図像化してきた熟練弁理士なら可能です。面談の相手を、発明者・相談者から暗黙知所有者、例えば、社長自身、あるいは、熟練社員、優秀社員、エキスパートなどと呼ばれる人に変え、併せて質問の内容とパターンを適切なものに変えればいいのです。多少時間はかかるかも知れませんが、十分可能です。(費用対効果を考えると、このような手法で言語化・図像化する暗黙知は、本当に重要なもの、組織知として共有する価値があるものに限定する方がよいかもしれません。)
 彼ら・彼女らと面談し的確な質疑応答(対話)をすることで、知識労働(例えば開発・設計業務、生産業務、企画業務)をする際に何をどのように考えているのかを、詳しく教えてもらうのです。こうすることで、彼ら・彼女らの頭の中にある暗黙知が上位概念化されたうえで言語化・図像化されるため、他の社員が理解して使えるようになるのです。
 ここで大事なのは、暗黙知の「本質」である「判断」がどのようになされているかを的確に抽出し、体系化(構造化)することです。そうすることで初めて、暗黙知提供者以外の社員だけで活用できるようになるからです。
 こうして、一人または少数の社員だけが持っていた暗黙知が、彼ら・彼女らの協力のもとで組織知に転換されるので、若手・中堅社員に暗黙知に基づく効率化や創意工夫が期待できるようになるわけです。
 なお、暗黙知見える化は決して簡単ではありませんが、人のアイデアや考えを言語化・図像化することに習熟している社員なら、暗黙知見える化の手法とコツを知ってから日常業務で経験を積むことで、できるようになるのは早いと思われます。(暗黙知見える化の手法を自社で再現できるように、別途、研修やコンサルティングも行う予定です。)
(4)最近、多くの日本企業は元気がありません。社長(部門長)は、会社の業績が良くて現状維持、ともするとどんどん悪化する状況にあり、社員を怒鳴りつけて現状を変えようと必死で動いているのに、状況は変わらず、イライラしっぱなしです。他方、社員は、会社の業績がなかなか上向かないために、将来に希望が持てないし、社長(部門長)に怒鳴られてばかりで、いいかげんウンザリしています。どちらも、自分たちの将来の姿が見えないため、希望が持てないのです。
 本セミナーを通じて、また、その後の研修やコンサルティングを通じて、落ち込んでいる日本企業を元気にしたい。彼らの笑顔を取り戻したい。そして、むしろ、特許や知的財産の分野ではなく、人材育成・能力開発の分野で、日本企業の業績改善に貢献できれば、と強く思っています。
(5) 「暗黙知見える化」を通じた企業業績改善を考えている弁理士なんて、まずいないでしょう。そのようなことを考えている私は、そうとうな変人だと思います。が、何とかして自分の能力で日本企業の業績改善に貢献したいという思いは、人一倍強く、「暗黙知見える化」はその思いから10年かかってようやく見出したテーマなのです。その後、それに必要な知識と経験を蓄積し、体系化しながら、今に至っています。
 この文章を読んで、日頃、企業で、技術の承継・共有やナレッジマネジメントに関する問題でお悩みで、「暗黙知見える化法」を利用することでそれらの問題を解決できるかもしれない、と思われた方は、ぜひ、私の話を聞きに来てください。少なくとも問題解決のヒントは得られるのではないか、と思います。
 では、当日、会場にてお会いしましょう。
プログラム
1.はじめに

2.知識の種類

 a.二種類の知識-形式知と暗黙知
 b.暗黙知の二つの側面
 c.暗黙知は人の直接経験から生まれる
 d.形式知と暗黙知の相互作用-知識変換

3.組織における知識資産の活用
 a.初級レベル=導入は容易だが、効果は限定的
  ・マニュアル、報告書、設計標準等の言語化・図像化された知識(形式知)を共有
  ・データベースやソーシャルネットワークを利用
  ・日常業務における行動をそのまま撮像して形式知化(簡易マニュアルとして使用)
  ・撮像ソフトやプレゼンソフトを利用、専用ソフトもあり
 b.中級レベル=導入は少し難しくなるが、効果は増大
  ・初級レベルに加えて、日常業務の遂行中に行われる動作や判断に含まれている暗黙知(コツ、ノウハウ)を抽出し、言語化・図像化して共有
  ・言語化・図像化すべき暗黙知を選別する人材が必要
  ・選別した暗黙知を言語化・図像化する人材が必要
 c.上級レベル=導入は決して容易ではないが、効果は最大
 ・初級レベルと中級レベルに加えて、熟練者、優秀技術者等のハイパフォーマーが持つ高度で価値ある暗黙知を特定し、上位概念化すると同時に言語化・図像化し、さらに体系化(構造化)して共有

4.暗黙知見える化を弁理士が始めた経緯
 a.特許明細書作成という仕事で培われたスキル
 b.企業にとっての特許の価値と無力感
 c.特許明細書作成は「発明」の言語化・図像化および体系化(構造化)である
 d.特許明細書作成は「発明」の本質を押さえた抽象化と具象化である

5.特許明細書作成時の弁理士の思考法
 a.特許明細書とは特許庁審査官あてに書く発明解説書である
 b.特許明細書を書く時に弁理士が頭の中でしていること
 c.弁理士の仕事は発明の言語化・図像化と本質把握である
 d.発明の抽象化と具象化を通じて発明を言語化・図像化する
 e.発明の抽象化によりその本質を掴む-請求項
 f.本質に基づいて発明を具象化する-実施形態
 g.発明の抽象化と本質把握の事例-六角形鉛筆の発明の場合

6.暗黙知見える化の目的
 a.意識改革
  ・社員が普段なにげなくしている行動の意味を考えさせる習慣付け
  ・積極的に学習する社員・組織、積極的に知識を共有する社員・組織への転換
 b.社員(特に上級技術者)の知識資産を見える化する仕組みの社内構築
 c.社員(特に上級技術者)の知識資産の承継・共有による人材早期育成体制の確立

7.暗黙知見える化の手法
 a.人の行為ではなく判断を可視化する
 b.暗黙知の本質は判断の仕方にある
 c.判断の類型とロジック
 d.判断のために必要な状況把握と参照情報
 e.判断のために必要な最適案選択と参照情報
 f.判断後の対策立案のために必要な推論
 g.抽象化(上位概念化)により暗黙知の本質を掴み言語化・図像化する

8.暗黙知見える化のキー=「観察」と「対話」
 a.重要な対話の場の設計
 b.対話は全体から詳細へ
 c.対話のゴールイメージの合致
 d.対話のベースは信頼関係
 e.相手の無意識的な認知能力に注意
 f.対話と並行して言語化・図像化
 g.モデル化・体系化・ロジック化
 k.含まれている判断を見出す
 l.判断の類型
 m.判断の前提条件と参照情報
 n.判断後に実行される行動とその根拠
 o.暗黙知を生み出した経緯

9.引き出した暗黙知の言語化・図像化法
 a.引き出した暗黙知の整理
 b.暗黙知中の判断が基礎としている原理の抽出
 c.暗黙知の上位概念化・体系化(構造化)

10.見える化した暗黙知の学習法
 a.研修マニュアル
 b.実践コミュニティ

11.知識資産を利用するための情報システム
 a.知識データベース
 b.公開Q&A広場
 c.Know-Whoデータベース
 d.社員能力マップ

12.おわりに

(事情により、当日の講義内容が一部変わることがあります。予めご了承ください。)
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