【趣旨】
現在は官能/感覚重視の時代であり、消費者は五感を無意識に、あるいは意識して働かせて香り・味わい・食感・見た目などから商品の本質的価値、特に「おいしさ」を判断している。一方でモノとそれを取り巻くコトが個人の官能/感覚を揺さぶり、嗜好や飲食スタイルの形成あるいは感性の形成に影響を及ぼしている。そして感覚評価のみならず製品関連の情報/付加価値(イメージ・物語りなど)を感性的に味わい、モノを選ぶ・決めるという傾向も一層増している。
商品の感覚/官能的な出来映えが商品力を決定づけ、また消費者の嗜好性を高める働きがあるため、メーカーは消費者を上回る官能評価力を駆使して品質課題を発見し、魅力溢れるおいしさを提案・提供していかねばならない。
そのためには、官能評価(主にQDA:定量的特性描写法)と官能開発(官能による品質開発)を商品の評価と開発のコアに位置付けた新たな〈企画・設計・開発〉の仕組み(SDP:Sensory Design Program)を導入・活用することが必要となろう。
本講座では、SDPによる感性価値設計/開発の方法論及び企画・設計・開発・生産部門の連携の重要性、酒類等の官能評価の現状と問題点、商品評価と設計に必要な情報と活用法、官能開発型人材の育成、暗黙知の見える化、各酒類の強み・弱みと商品化の方向性、現在及び今後の製品価値のあり方等について説明致します。
1.はじめに
1-1 品質評価(五感評価・成分評価・生理的/心理的評価)の重要性
1-2 トータルマーケティングのコアとしての官能評価
1-3 官能評価情報が生み出すメーカーの様々なアウトプット
2.酒類等の官能評価の現状と課題
2-1 酒類の官能評価‥3つのポイント‥
2-2 官能用語と定義の明確化及び官能強度のサンプルの選定
2-3 ウイスキー、ブランデー、ワイン、ビール、本格焼酎、清酒のQDA評価チャート
2-4 酒類の官能評価法の強み・弱み
2-5 官能評価のプロが陥る問題点
2-6 官能評価の専門家と酒類ユーザーの評価の相違点と類似点
2-7 官能評価デ-タ/品質関連情報のライブラリー化
2-8 官能スキルの向上(心・技・体・環境)
2-9 品質の企画・設計・開発人材のあり方(鬼に金棒とは)
3.今後の商品評価と商品開発のスキーム
3-1 商品評価の主要項目
3-2 SDP:官能評価(必要条件)プラス官能開発(十分条件)の新しい枠組み
3-3 企画・設計開発部門で共有する商品開発シート例
3-4 QDAプロファイルと評価データの二軸分析による品質特性の把握と新たなイメージ
プロファイルの描き方
3-5 更に下記品質関連情報を加味したダイナミックな品質イメージのデザイン
3-5-1 新規品質の発想と開発/生産の決め手となる「品質-技術マップ(香味の設計・製造ハンドブック)」の整備
3-5-2 企画・設計・開発部門の総力で作成する「時代のキーワード一覧と官能用語への変換表」
3-5-3 開発の参考となるベンチマーク製品の特性項目の抽出と官能用語への変換
4.現在の酒類の製品動向と今後の設計キーワード
4-1 品質/つくりの新たなスタンダードづくり
4-2 酒類の飲用価値の置き方(コスト・パフォーマンスとボリューム・パフォーマンス)
4-3 生産地とマーケットの2軸分類からみる製品イメージ
4-4 マーケットイン型とプロダクトアウト型の商品
4-5 酒類の香味とつくり、そしてイメージからみる強み・弱み
4-6 伝統的な酒類のこだわりとは
4-7 力強い商品づくり(開発者の思い、圧倒的なうまさ、オリジナリティ、らしさの盛り込み)
4-8 モノからモノ語りへ、モノ開発からモノ・コト開発へ
5.今後の商品開発と技術開発の方向性
5-1 開発課題の評価・設定と解決手順
5-2 商品(開発)と技術(開発)の一体化
5-3 プロダクトテクノロジー/プロダクションテクノロジーの短・中長期的マネジメント
5-4 QDA評価の将来課題
5-5 嗜好科学の重要性(五感・サイエンス・テクノロジーの連動)
5-6 暗黙知と形式知のスパイラルアップによるメーカー基盤の向上