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2016年2月末、敗血症診療は新たな時代の幕開けを迎える。1992年に米国集中治療医学会が敗血症診断基準を発表しておおよそ四半世紀が経つが、今日まで数多くの基礎・臨床研究や国際的な診療ガイドラインやキャンペーンが展開されているものの、未だ敗血症は認知度が低く画期的な治療法・治療薬のない重篤な疾患である。なぜ敗血症の治験はいつも失敗するのか?現行の敗血症の診断は適切なのか?なぜ重症度・ステージ分類は行われないのか?本講演では現行の敗血症診断の問題点を中心に、「敗血症」を見つめなおす。
また少子高齢化に伴い、近年高齢者の敗血症患者が爆発的に増加している。免疫機能が障害された高齢者は体内に侵入した病原体を排除できない免疫抑制状態に陥るため、敗血症が重症化しやすい。発表者らは、65歳未満の成人敗血症患者と比較して65歳以上の高齢敗血症患者では、(1) 3ヶ月後死亡率が4倍高いこと、(2)T細胞の数と機能が著しく減少していること(T細胞の疲弊)、(3)敗血症後の2次感染率が有意に上昇していること、を報告してきた(Inoue et al. Crit Care 2014, Inoue et al. Crit Care Med.2013)。免疫機能が破綻した高齢者の敗血症をどのように認知し治療につなげるか?本講演では私たちの免疫システムの概要と加齢に伴う免疫機能の変化を述べるとともに、免疫弱者である高齢者敗血症の治療戦略と今後の展望について考察する。また2016年春に24年ぶりに改定となる新敗血症診断と今後の展開について解説する。
1.はじめに
2.敗血症とは
(ア)重症敗血症と敗血症性ショック
(イ)敗血症の病態生理
(ウ)敗血症治療のエビデンス
(エ)敗血症ガイドライン作成過程と啓蒙活動
3.超高齢者社会における敗血症
(ア)本邦における高齢者の推移と敗血症罹患率
(イ)加齢における免疫機能の変化
(ウ)高齢敗血症患者における免疫機能解析
(エ)老化免疫に基づいた新規敗血症治療戦略
4.敗血症を見つめなおす
(ア)敗血症診断のピットフォール
(イ)現行の敗血症診断の問題点
(ウ)新敗血症診断基準でICU診療はどう変わるか?
(エ)細菌に注目した新規敗血症診断
5.敗血症治療における現状の問題点と求められる新薬・治療法像