<1>樹脂中の添加剤分析
【習得できる知識】
・代表的な添加剤の種類
・樹脂の劣化原因の概要
・添加剤分析の工程と分析手法
・クロマトグラフィー、質量分析の基礎
【講演の趣旨】 樹脂は成型時や製品として使用する際の劣化を抑制する安定剤、物性の改善や本来持たない特性を付与する機能性付与剤等の添加剤が必要とされる。これら添加剤の分析目的は以下の2点に大別され、品質管理や製品開発のうえで重要である。
1.自社品:プラチックの性能確認や劣化解析等の品質管理
2.他社品:市場調査や特許対策
他社品の場合はたとえ同種の樹脂であっても加工方法、用途によってメーカー毎に添加処方が異なるため、複数の機器分析を駆使した網羅的な分析が必要となり、当然難易度は高くなる。本講演では有機系添加剤を中心に樹脂中添加剤の分析手法について実例を交えて紹介する。
【プログラム】
1.添加剤について
1-1.添加剤の種類と分析の目的
1-2.安定剤
・代表的な樹脂の劣化機構
・酸化防止剤
・耐候安定剤
1-3.機能性付与剤
・滑剤
・帯電防止剤
・核剤/透明化剤
・可塑剤
2.分析方法
2-1.分析の概要
2-2.抽出方法
・溶解再沈殿抽出
・ソックスレー抽出
・高周波抽出
2-3.定性分析手法
・質量分析(直接導入法)
・GC/MS
・LC/MS
・TOF-SIMS
2-4.定量分析法
・GC
・HPLC
・GC/MS、LC/MS
3.分析事例紹介
・フィルム表面ブリード物の分析
・ゴムの添加剤分析
・プラスチックの劣化解析
・フィルム中の添加剤分布解析
【質疑応答・名刺交換】
<2>熱脱着GCおよびMALDI-MSによる高分子添加剤の直接分析
【習得できる知識】
・熱脱着GC法の基礎原理と測定方法の実際
・MALDI-MS法の基礎原理と測定方法の実際
・熱脱着GCとMALDI-MSによる樹脂中の光安定剤の分析方法
【講演の趣旨】 一般に、高分子材料中の添加剤分析には、予め溶媒抽出などにより、当該成分を基質から分離した後に各種計測法に供する方法が用いられている。しかし、この方法では、抽出分離に際して1) かなりの試料量と長時間にわたる煩雑な操作を必要とすること、および2) 対象物によっては目的成分が定量的に抽出されなかったり、それらの汚染や変性が起こったりすること、などが問題点として指摘されている。これに対して、熱脱着ガスクロマトグラフィー(熱脱着GC)やマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法(MALDI-MS)などの手法を利用して、様々な高分子材料中の添加剤成分の分析を、試料によっては抽出操作を伴わずに迅速かつ簡便に行うことが可能である。
本講座では、まず、熱脱着GCおよびMALDI-MSの測定原理や装置構成を解説し、次にこれらの方法を高分子材料中の添加剤成分の分析に応用した事例をいくつか紹介する。なお、ここで熱脱着GCについては、熱分解GCをベースとする方法論に注目して、その測定手順や応用例を解説する。さらに、両手法を総合的に活用して、樹脂中の光安定剤の詳細な構造キャラクタリゼーションを行った事例を紹介する。
【プログラム】
1.添加剤分析の概要
2.熱脱着GCの基礎と簡単な応用例
1-1.測定原理と装置構成
1-1-1.原理と測定方法
1-1-2.熱脱着部や分離カラムなどの装置構成
1-1-3.簡単な応用例
1-2.熱分解装置を利用した熱脱着GC
1-2-1.原理と測定方法
1-2-2.熱分解装置の種類と特徴
1-2-3.多段階熱分解を利用した分析
1-3.化学反応を加味した熱脱着GC
1-3-1.原理と装置構成
1-3-2.応用例(紙中のサイズ剤の直接定量など)
3.MALDI-MSの基礎と簡単な応用例
3-1.原理と装置構成
2-1-1.質量分析計の構成
2-1-2.MALDIのメカニズム
2-1-3.飛行時間型質量分離の機構
3-2.測定条件と実験手順
2-2-1.マトリックス試薬の選択
2-2-2.試料結晶の調製
2-2-3.固体試料調製法を採用した方法論
4.反応熱脱着GCおよびMALDI-MSによる樹脂中の光安定剤の直接分析
4-1.光安定剤について
4-2.反応熱脱着GCによるポリプロピレン中の高分子量光安定剤の直接分析
4-2-1.直接定量分析法の開発
4-2-1. 紫外線照射に伴う光安定剤の構造変化の解析
4-3.MALDI-MSによるポリプロピレン中の高分子量光安定剤の直接分析
【質疑応答・名刺交換】