2019年06月03日(月)
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UV硬化技術はコーティング、インキ、接着剤、フォトレジスト、エレクトロニクス部材、自動車関連部材など広い領域で表面加工技術として広く利用されている。この技術は高速で硬化できるので、熱硬化に比べて経済的であり、溶剤を利用しないあるいは極度に低減できるので環境保全の立場からますます重要になってきている。
このような状況の中でこの分野に興味を持ち、この技術を習得しようとしたとき、この技術が複雑で習得するのが大変と思われている方も多いと思う。しかし、基本を理解するとそのような心配はなくなる。
この技術は光源、フォーミュレーション(配合物:オリゴマー、モノマーおよび開始剤など硬化する材料)および応用(高速プロセス、用途など)の要素技術から成り立っており、原理的には簡単であるが、実用化に当たっては必ず理解しておかないとトラブルを起こすことがある。
本講ではUV硬化を利用するにあたっての必須事項(光源、フォーミュレーション、硬化過程の評価、硬化物の評価など)の紹介とトラブル対策(酸素硬化阻害、硬化収縮、黄変など)を中心に紹介する。講義に先立って(1)質問を受け講義に反映する。(2)講義中、質問を受け回答するなどの討論形式で疑問点の解決を図る。(3)個人的な質問は講義の後で、会場の時間の許す範囲で答える。
なお、最近の話題であるUV-LED硬化技術の動向と課題、デュアル硬化(未露光部の硬化)、ハイパーブランチポリマーの利用、チオール・エンUV硬化、無機-有機ハイブリッド系UV硬化についても紹介する。
1.はじめに
UV硬化技術とはどのような技術か
原理と方法(光源、配合物(フォーミュレーション)および用途(応用))
(この項ではUV硬化の原理と技術について、応用との関連で紹介する)
2.光源の選択
2.1 紫外線(UV)の選択
2.2 光源:
高圧水銀ランプとメタルハライドランプの選択(クリヤーコートと印刷インキ)、最近登場したUV-LED(UV発光ダイオード)(単一波長395,385および365nm)の長所と短所:
2.3 光の波長、強度の理解とUV硬化における活用法
(この項では光源について、i)光の特徴 ii)用途と光源の選択について解説する)
3.UVラジカル硬化
3.1 光開始・熱硬化反応の特長:
硬化速度を上げるための方法;光源、開始剤、モノマー、オリゴマーの選択、赤外線の利用(前加熱あるいは後加熱の利用)
3.2 開始剤の選択(硬化速度を決める材料):開始剤がなぜ必要か、光源とのマッチングとは何か、短波長硬化と長波長硬化の違いと利用法
[例:紫外線吸収剤共存下でのUV硬化(耐侯性硬化物)、着色物のUV硬化など]
3.3 モノマーおよびオリゴマーの選択(硬化物の物性を決める材料の選定方法)
1)高分子の構造とセグメント運動(硬い硬化物と軟らかい硬化物の設計法)(応用例:クリヤーハードの設計、粘着剤の設計など)
2)モノマーおよびオリゴマーの構造と選択法
3)硬化収縮とその対策:オリゴマー、デンドリマー、ハイパーブランチポリマーの利用
4)酸素硬化阻害対策法:添加物の利用(アミン、エーテル、シランなど)チオール・エンUV硬化法
5)UV硬化物の黄変と硬化物の耐候性
(現在、UV硬化の主流はUVラジカル硬化である。この項では i)UVラジカル硬化の原理・特長の解説 ii)光源と開始剤の選択法 iii)フォーミュレーションの選択法について紹介する。さらに、i) 酸素の硬化阻害 ii) 硬化収縮 iii) 密着不良など,技術面での課題の対策法について解説する)
4.UVカチオン硬化:酸素共存下でも利用できる硬化法
4.1 UVカチオン硬化の長所と欠点:UVラジカル硬化と比べてどのような利点があるのか、最近の動向はどうなっているのか
4.2 開始剤(光酸発生剤)からの酸発生機構と重合開始活性について
4.3 モノマー(エポキシ化合物)の構造と硬化性
4.4 素反応と硬化機構
4.5 硬化速度の加速法:増感剤の利用、モノマーの選択(オキセタン、ビニルエーテルの併用など)
(UVカチオン硬化はエポキシ化合物、オキセタンなどUVラジカル硬化では硬化できないモノマーの硬化が可能で、酸素の硬化阻害がない、硬化収縮度が低い、接着性が良好などの特徴がある。実用化に当たってのUVカチオン硬化の長所と短所について解説する)
5.UVアニオン硬化:新しいUV硬化法の提案
5.1 UVアニオン硬化の意義
5.2 光塩基発生剤の開発動向
5.3 UVアニオン硬化の実用化:現状と展望
瞬間接着剤、感光性ポリイミド、塗料など
(UVアニオン硬化は現在開発が進行中の硬化系である。開始剤はかなり開発されているが、用途例はまだ一般的でなく、チオール‐エポキシ系などが典型的な例で、これからの展開が期待されている。その現状と展望について紹介する)
6.硬化過程の追跡法と硬化物の評価
6.1 硬化過程の追跡
1)RT(リアルタイム)-FTIRによる硬化過程の追跡
2)Photo-DSC(光熱分析法)による硬化過程の追跡
3)レーザーラーマン分光分析を利用する硬化度の解析
4)製造工程におけるリアルタイム硬化追跡法
i)近赤外反射法を利用するリアルタイム硬化追跡法
ii)蛍光を利用する硬化過程の追跡法
(UV硬化がどの程度進行しているか、目的とする硬化度は達成されているかなど、硬化過程(in-situ)で硬化の程度を知りたいという生産プロセス上での要望がある。この項では、硬化過程を追跡する方法として 1)モデル実験での分析法と 2)in-situ(製造プロセス)での追跡法について紹介する)
6.2 硬化物の評価(ハードコートの評価)
1)指触法
2)ラビングテスト:耐溶剤摩耗性(メチルエチルケトンなど)
3)鉛筆硬度(基板の硬度に注意)
4)密着試験(クロスカット試験)
5)ユニバーサル硬度:フィッシャー硬度計(微小圧子によるへこみの程度評価と弾性率評価)
(硬化物の評価法について塗料を中心に物性評価の方法を紹介する)
7.UV-LED硬化技術の特長と現状(低温硬化のメリットとデメリット)
7.1 単一波長の光を放射するUV-LEDの開発と硬化法への活用
7.2 RadTechi Asia 2016(Tokyo))にみるUV-LED硬化法の動向(光開始剤の選択)
7.3 UV-LED (395nm)硬化で利用できる増感剤の開発
7.4 短波長(UV-C)LED硬化法
7.5 UV-LED硬化法におけるLED(UVA), LED(UVC),およびIR(赤外線)の利用法
(UV硬化の光源は高圧水銀ランプ、メタルハライドランプが主に利用されてきたが、UV-LED(UV発光ダイオード)の出力が上がりUV硬化でも利用できるようになりその利用が広がっている。光源としては395,385,および365nmを放射するものが利用されている。光源と開始剤の選択が重要である。さらに、赤外線(IR)(加熱)の併用、UVC領域のLEDによる硬化について検討が始まっている。その現状と展望について紹介する)
8.デュアル硬化法:光があたらないところの硬化(光と熱、光と湿気の利用)
(UV硬化法の欠点は光が当たらないところは硬化しないことである。光が当たらないところでも硬化が求められることがある。ここでは、実用化された例を含めて光と熱を中心にデュアル(二方式)硬化およびハイブリッド(混成活性種(ラジカルとイオン種)硬化について紹介する)
9.UV硬化塗膜と基板との密着について(基礎的な考え方と具体例)
i)表面張力からみた塗料と基材相互作用:ぬれ
ii)溶解パラメーターからみた塗膜の密着しやすさ
iii)具体例でみるUV硬化塗膜と基材との密着性:プラスチック、金属、無機材料など
iv)硬化収縮と対策
v)基材とUV硬化塗膜の密着性をよくするために考慮すべきこと
(基材との密着を考慮してUV硬化塗料の選択したいとき、知っておくべき原理と具体的例について紹介する)
10.おわりに:
RadTech Asia 2016 (Tokyo) (第14回紫外線・電子線硬化技術国際会議)にみる最近の動向と今後の展望
11. 参考文献
紫外線、樹脂、高分子、ポリマー、プラスチック、接着剤、粘着剤、塗料、講座、研修、セミナー