第1講 酵素化学の基礎とペプチド合成への応用
13:00~15:30
酵素は、生命活動を支える様々な化学反応を触媒するタンパク質である。「酵素の食品への利用」は多岐にわたり、例えば、デンプンを原料とした甘味料の製造では各工程に不可欠な酵素が用いられ、加工食品の物性改善のためにも酵素が利用されている。生鮮食材では、内在性酵素による反応が食材の外観や成分などに多大な影響を及ぼす。すでに知られ利用されている酵素のほか、新規の酵素を含めて、今後も様々なニーズに沿って酵素活用の幅が広がることが期待される。本セミナーでは、酵素の働きを理解し、利用展開を進める上で必要な酵素反応解析の基礎と、機能性新素材の合成へ酵素を利用する研究についてペプチド合成を例にご紹介する。その中で、酵素利用の課題にも触れたい。
1.食品分野における酵素利用の事例
2.酵素反応解析の基礎
3.酵素利用の課題
4.酵素的ペプチド合成の研究例
第2講 新規液体麹の開発とその利用
15:40~16:40
麹菌の固体培養物(固体麹)は、醸造に必要な多種類の酵素を大量に含有する。一方、麹菌の液体培養物(液体麹)は、含まれる酵素の種類や含有量が低いことが知られていた。特に焼酎製造において鍵酵素となる、耐酸性α-アミラーゼを液体培養法で生産する事は、従来不可能と考えられていた。今回我々が開発した技術は、この酵素を含む多種類の酵素の同時高生産を可能とする液体培養法である。最大の特徴は、穀皮にて覆われた状態の穀類(玄大麦等)を液体培地原料として用いることである。白麹菌と玄大麦を用いた液体麹を用いると、焼酎製造における発酵特性に問題はなく、出来上がった焼酎の品質も通常品と差が認められなかった。また麹菌や麹原料をいろいろ組み合わせることにより、差別化できることも判明した。本セミナーでは、この技術について使用例含め詳解する。
1.固体麹と液体麹
2.液体麹による複数酵素高生産検討
3.液体麹の焼酎製造への応用
4.液体麹の無蒸煮発酵への応用