第1部 導電性フィラー分散高分子の導電-絶縁制御
10:30~12:00、12:45~14:15
ポリマーに金属、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどの導電フィラーを充填した導電性フィラー分散高分子は、フィラーが複合材料中でネットワーク状に連なり導電パスを形成するため、特異な電気特性を示す。具体的には、温度上昇とともに電気抵抗率が増加する正の抵抗温度係数(PTC: Positive Temperature Coefficient)特性を示す。PTC特性を示す材料は永久ヒューズ、温度センサー,ヒーターなどに応用可能である.本材料を永久ヒューズに応用する場合、室温抵抗率が低くかつ高温抵抗率が高く、抵抗率の増加が温度に対して急峻である必要がある。本講演では、フィラーはそもそも高分子のどこに入るのか、室温時の抵抗を低下させ、一方、高温時の抵抗を上げるというトレードオフの関係を達成するためには、PTC特性の発現はどのような機構で起こるのか、高分子とフィラーのインターラクションについて、懇切に紹介したい。
1. 導電フィラー分散高分子材料とは?
1-1. PTC(PTC: Positive Temperature Coefficient)特性とは
1-2. 複合材料の導電性発現機構
1-3. 高分子の種類とPTC特性との関係
1-4. フィラーがCBの場合のPTC特性-最適なCBは-
1-5. フィラーが金属の場合のPTC特性-最適な金属は-
2. ポリマーの結晶化度とフィラー分散高分子のPTC特性との関係
2-1. ポリマーの結晶化度の評価法
2-2. ポリマーの結晶化度とフィラー分散高分子のPTC特性
2-3. フィラー充填量とポリマーの結晶化度
2-4. フィラー充填量とフィラー分散高分子のPTC特性
3. フィラー分散高分子の溶融後の冷却速度の導電性への影響
3-1. 溶融後の冷却速度とポリマーの結晶化度
3-2. ポリマーの結晶化度と室温抵抗率
3-3. ポリマーの結晶化度とPTC特性
4. 結晶性高分子/Ni複合材料のPTC特性
4-1. Ni充填率と複合材料の室温抵抗率
4-2. Ni充填率と複合材料のPTC特性
4-3. 高分子とフィラーのインターラクション
4-4. FITモデル
5. ポリマーの分子量と複合材料の導電性
5-1. HDPEの分子量と複合材料の導電性
5-2. PMMAの分子量と複合材料の導電性
6. 非晶性ポリマーと複合材料のPTC特性
6-1. 非晶性ポリマーにおけるフィラーの分散性(SEM写真)
6-2. 非晶性ポリマーにおけるPTC特性
7. ポリマーブレンド/Niにける常温抵抗率とPTC特性
7-1. HDPE/PMMA/Ni複合材料の電気特性
7-2. HDPE/PVDF-Ni複合材料の電気特性
7-3. HDPE-Ni/PVDF複合材料の電気特性
7-4. PVDF/PMMA/Ni複合材料の電気特性
8. 複合材料のPTC特性の定量的解析
8-1. パーコーレーション理論における閾値の定義
8-2. ポリマーの体積膨張及び結晶化度を考慮したPTC特性
8-3. 絶縁領域の抵抗率になる温度での複合材料の見かけのフィラー充填率
第2部 フィラー分散高分子の絶縁・熱伝導性制御
14:30~16:30
電子デバイス機器や電気エネルギー機器の過熱・地絡防止を可能にする高熱伝導性かつ電気絶縁性を両立する材料に対するニーズは高いが、相反する両特性の双方向上は容易ではありません。本技術は、パワーデバイスや電気エネルギー機器の放熱・絶縁部材への応用を見据えた高熱伝導性ポリマー絶縁材料の開発事例について紹介します。
1. ナノコンポジット絶縁材料研究動向
1-1. 電気学会における活動およびナノブックの紹介
1-2. ナノコンポジットの特徴と応用例
1-3. ナノコンポジットの創製方法
1-4. ナノコンポジットによる各種特性向上
1-5. メカニズム検討例
1-6. 今後の展望
2. 機能性高分子絶縁材料の研究成果紹介
2.1. ナノコンポジットによる電気絶縁性の向上
2-2. エポキシ/フラーレンナノコンポジットの作製と絶縁耐圧向上
2-3. ナノアルミナ被覆による導電材料の電気絶縁化
2-4. フィラー電界配向による熱伝導率の向上
2-5. フィラー電界配向による誘電率の向上
2-6. フィラー電界橋絡によるコンポジットバリスタの創製
2-7. フィラー密度分布制御による傾斜機能化
2-8. エポキシ代替を狙った炭化水素系熱硬化性樹脂
2-9. マイクロ気泡含有樹脂による低誘電率化と絶縁性能評価
2-10. 次世代パワーモジュール開発への研究動向
3. おわりに