喉・口の渇きと商品開発

～水分・塩分の体内調節機構、飲水行動発現のメカニズム、スポーツドリンク設計の考え方～

■第１部　喉・口の渇きと飲水行動発現のメカニズム（３時間）

Ⅰ．体液調節
　１．体液とは
　　ａ．体液の組成と区分　　
　　ｂ．浸透圧
　２．浸透圧調節系と容量調節系
　３．一次飲水と二次飲水
　４．体液調節に関与する臓器

Ⅱ．泌尿器系・循環器系および内分泌系の体液調節への関与
　１．腎臓による体液調節
　２．心臓の体液調節への関与
　　ａ．高圧系圧受容器　　　
　　ｂ．低圧系圧受容器
　３．内分泌
　　ａ．バゾプレッシン
　　ｂ．レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系
　　ｃ．心房性ナトリウム利尿ペプチド

Ⅲ．飲水行動発現のメカニズム
　１．液性情報による調節
　　ａ．浸透圧受容器　　
　　ｂ．ホルモンによる調節
　　ｃ．ナトリウム受容との関連
　２．神経性調節
　　ａ．心臓からの情報　　
　　ｂ．門脈からの情報
　　ｃ．胃からの情報　　
　 ｄ．喉からの情報
　３．口渇中枢による情報の統合と行動の発現
　　ａ．脳室周囲器官と視床下部　
　　ｂ．摂食との関連
　　ｃ．報酬系との関連　
　　ｄ．神経伝達物質および修飾物質による調節

Ⅳ．口の乾きのメカニズム
　１．唾液分泌
　２．唾液分泌低下症
　３．口の乾きと喉の渇きとの違い

Ⅴ．喉の渇きの疾病などによる変化

【講演概要】
　水分の摂取行動・飲水行動は動物が生きるために最も重要な行動ですが、通常の生活を送っていると特に強い口渇感を覚えることありません。それは、食事時に水分を摂取していること、および体内に水分を調節するメカニズムが備わっているからです。水分を摂取できなかったり、体内水分調節機構が変調すると喉の渇きを覚え、飲水行動が起きます。運動などで大量に汗をかくと、水分だけではなく塩分も欲しくなります。水分摂取と塩分摂取は一見逆の関係のように見えますが、これらの行動に起因する神経調節は、ほぼ同じ脳神経核で行われていることが判っています。本講座では、水分や塩分の体内での調節機構、および水分・塩分摂取機構について概説します。また、二日酔いをした時に喉が渇く理由について、新しい知見を得ましたので、可能な限り講演に盛り込む予定です。

■第2部　水分不足の生体への影響と水分補給のポイント（3時間）

Ⅰ．水分不足の影響
　１．水分出納　　
　２．水分不足と認知機能・子供の学習能力　　
　３．旅行者血栓症（エコノミークラスシンドローム）

Ⅱ．水分補給のポイント
　１．水分補給と体温調節　　　
　２．汗の電解質　　　　　
　３．塩分の意義と必要量
　４．消化管内の浸透圧　　　　
　５．水分の過剰摂取　　
　６．水分補給に影響する要因
　７．ウォーターローディング

Ⅲ．スポーツドリンク設計の考え方
　１．運動の目的別　　　　　　　
　２．糖質補給の意義と必要量
　３．スポーツドリンクのほうがソフトドリンクよりも低エネルギー
　４．運動と味覚の変化　　　　　
　５．補給すべき成分で飲料を選択　　
　６．高地・寒冷地での水分補給

【講演要旨】
　水分は身体の構成成分の中では最も多く体重の60％程度を占めています。運動などで発汗しなくても１日当たり約2リットルの水分が身体から失われるので、同量の水分を補給する必要があります。また、ナトリウムなどの電解質も水分とともに排泄されるので補給が必要です。このため、水分補給では水だけ補給すれば良いというわけではありません。一方、水分補給は体を動かす能力だけでなく知的作業にも影響することが分かっており、子供の学習能力にも水分不足は望ましくありません。また、発汗量とエネルギー消費量の多いスポーツ時には水分・塩分とともにエネルギー源の補給が必要なため、スポーツドリンクには科学的根拠があります。講演ではこれらのことについてデータを紹介しながら解説します。