☆「プラスチック」「ゴム」「接着仕様」などの樹脂製品・材料における劣化寿命予測法を基礎から応用、加速条件設定について習得する!
本講座はプラスチック・ゴム・接着仕様などの樹脂製品・材料における劣化寿命予測をアレーニウス型やラーソンミラー型による予測式を取得し、目的とする特性値・試験温度・負荷時間を求めることを中心に纏めている。
第1講では「寿命予測の基礎」として、アレーニウス型並びにラーソンミラー型の寿命予測式の導出と設定した予測式の重回帰分析により、プラスチック・ゴム・接着仕様の事例を題材として、劣化寿命予測の手法が成立するに至った経緯について手順を追い解説しているので内容の理解が得られ易いものと判断している。また、ラーソンミラー型においてはマスターカーブが取得できることから、マスターカーブの判定方法や活用方法についても解説する。
第2講では、「劣化加速条件の設定方法と寿命予測手法の応用」として、加速条件の設定方法と寿命予測手法の応用とその展開内容、加速倍率の把握手法等について解説する。
通常、劣化加速条件を設定するには対象製品の温度頻度表を必要とするが、温度頻度表を作成するには1年間における対象部位の温度測定が必要である。国内市場を対象とした製品の温度測定であれば、比較的容易に温度頻度表が取得可能であるが、海外市場をターゲットとした製品における年間での温度測定はハードルが高い。この場合、製品の最高温度のみ既知であれば温度頻度表がなくても加速条件設定が可能である。温度頻度表がない場合における加速条件の設定で最も重要なことは、劣化部位における対象の特性値に対する適切な判定基準の設定である。化学反応においては10℃2倍速が一般的であることから、樹脂製品の分野においても10℃2倍速を採用する傾向があるがこの考え方は正しいであろうか。答えは否である。プラスチック材料の熱劣化による強度変化などにおいては、100kJ/mol前後の活性化エネルギーが一般的である。100kJ/molの活性化エネルギーは10℃3倍速に匹敵する。
第3講では、「劣化寿命予測並びに加速条件設定手法の製品への適用」としてプラスチック・ゴム・接着仕様における各種劣化現象に対するメカニズム解析・寿命予測・加速条件設定を中心に解説するが、寿命予測と加速条件設定については第1講並びに第2講において基本的なことを把握しており、その応用の意味合いを持つ。プラスチック製品・材料については主要な不具合現象であるソルベントクラック、環境応力割れ、クリープひずみ及び破壊、疲労破壊を取り上げる。ゴムについてはシール部品、ダイアフラムについての劣化メカニズム、寿命予測、加速条件設定方法およびゴムの不具合とその対策について解説する。接着仕様については、接着メカニズム並びに劣化メカニズムについて解説した後、冷熱サイクルにおけるプラスチック被着体とガラスとの線膨張係数の違いを主因としたガラス剥離現象の対応の他、熱劣化並びに疲労負荷における寿命予測方法について述べる。
1.従来法と重回帰分析(提案)法による劣化寿命予測
1-1 従来法による高分子材料・製品の劣化寿命予測方法
1-2 重回帰分析法(提案法)の概要
1-3 ラーソンミラー型による重回帰分析の手順
1-4 ラーソンミラー型予測式による使用時の寿命
1-5 アレーニウス型による重回帰分析の手順
1-6 アレーニウス型予測式による使用時の寿命
1-7 従来法並びに重回帰分析法による使用時の寿命の比較
2.寿命予測式の導出
2-1 アレーニウス型寿命予測式の導出
2-2 重回帰分析による寿命予測式の設定
2-3 寿命予測式の設定手順
2-4 ラーソンミラー型寿命予測式の導出
2-5 ラーソンミラー型における寿命予測式
2-6 ラーソンミラーパラメータ式への変換
2-7 ラーソンミラーマスターカーブの作成
2-8 全ての重回帰分析結果
3.ラーソンミラーマスターカーブとT-t線図
3-1 パラメータ式の右辺と左辺によるマスターカーブの比較
3-2 T-t線図における材料定数・Cの特定と検証
3-3 T-t線図によるラーソンミラー式の導出
3-4 寿命予測式による活性化エネルギーの求め方
4.取得データの相関性の把握
4-1 寿命予測が可能な特性
4-2 取得データの相関性の検討
4-3 エクセルの分析ツール設定と「相関」の操作
4-4 相関係数の把握による説明変数間のチェック
4-5 エクセルの分析ツールによる重回帰分析実施手順
4-6 分析ツール・回帰分析以外の重回帰分析の方法
4-6-1 INDEX(LINEST)関数による方法
4-6-2 LINEST関数による方法
5.寿命予測スキル向上のための補完項目
5-1 寿命予測の流れ
5-2 ラーソンミラーマスターカーブの作成方法
5-3 マスターカーブの温度別プロットに近似曲線を引く方法
5-4 重回帰分析における統計値の算出方法
5-4-1 統計値の算出方法
5-4-2 重要な項目における計算方法と判定
1.時間-特性値線図の傾きと寿命予測式
1-1 時間-特性値線図の作成と対象データの重回帰分析
1-2 特性値の算出
1-3 時間-特性値線図の傾きが等しい場合の重回帰結果
1-4 時間-特性値線図の傾きが異なる場合の重回帰結果
1-5 活性化エネルギーと材料定数・Cの関係
1-6 予測結果並びにオリジナルデータによる時間-特性値線図の傾きの比較
1-7 重回帰による予測式一覧
2.時間経過により低減または増加する特性値の処置
2-1 経時低減型および経時増加型の特性値
2-2 経時低減型特性値による寿命予測
2-2-1 TTPデータの重回帰分析
2-3 経時増加型特性値による寿命予測
2-3-1 TTPデータの重回帰分析
2-4 経時低減型並びに経時増加型特性値データの比較
2-5 寿命予測式による特性値の計算
3.各種寿命予測法
3-1 重回帰分析法以外の各種寿命予測法
3-2 ラーソンミラーマスターカーブによる寿命予測
3-3 ラーソンミラーパラメータ式の確認
4.加熱硬化接着剤における硬化時間の予測
4-1 取組の概要
4-2 因子間の関係把握
4-3 硬化率予測式の取得
4-4 マスターカーブの修正
4-5 PETの熱分解におけるDSCデータの処理方法
4-5-1 取得データによる重回帰分析
4-5-2 加熱温度と処理時間とのマトリックス表による重回帰分析
4-5-3 ラーソンミラーマスターカーブから活性化エネルギーを求める方法
5.高分子製品における残存寿命の把握方法
5-1 残存寿命把握の意義と題材事例
5-2 残存寿命の把握の流れ
5-3 マイナー則による疲労寿命計算の適用
5-4 マイナー則による樹脂部品の残存寿命の予測
5-5 ABS製部品の残存寿命の把握
5-5-1 基礎データの取得
5-5-2 黄変度における残存寿命の予測
5-5-3 市場回収品と加速試験供試品によるΔYIの比較
5-6 EPDM製ガスケットの残存寿命の把握
5-6-1 基礎データの取得
5-6-2 破断時伸び率における残存寿命の予測
5-6-3 市場回収品と加速試験供試品による破断時伸び率の比較
6.湿度因子の処理方法と寿命予測
6-1 温度と相対湿度データの絶対湿度への変換
6-2 絶対湿度を変数とする予測式の設定
7.製品の保証期間と加速倍率並びに加速時間
7-1 アレーニウス型の加速倍率算出式並びにm℃n倍速型算出式
7-1-1 アレーニウス型の加速倍率算出式による10℃2倍速の計算
7-1-2 m℃n倍速型算出式による寿命計算
7-1-3 m℃n倍速型とアレーニウス型の倍速値の比較
7-1-4 アレーニウス型算出式による寿命計算
7-2 高分子製品の保証時間を担保する加速時間の設定
7-2-1 m℃n倍速型算出式における加速倍率と加速時間
7-2-2 アレーニウス型算出式における加速倍率と加速時間
7-2-3 m℃n倍速型とアレーニウス型算出式での結果の比較と両式の使い分け
7-2-4 材料定数・Cと加速倍率の関係
8.高分子材料・製品における加速条件の設定
8-1 加速条件設定の原則
8-2 温度頻度表有無による加速条件の設定
8-2-1 温度頻度表がある場合における加速条件の設定方法
8-2-2 温度頻度表がない場合における加速条件の設定方法
1.プラスチック
1-1 ソルベントクラック
1-1-1 不具合事例
1-1-2 発生メカニズム
(1) 発生過程
(2) 溶解パラメータ(SP値)と臨界応力または臨界ひずみとの関係
(3) 1/4楕円法
(4) クラック臨界応力と溶解パラメータ(SP値)の関係
(5) ひずみレベルの判定基準
(6) SP値とクラック臨界応力関係図における類別溶剤種の位置
(7) SP値と臨界ひずみとの関係
(8) 使用区分と溶剤の類別
(9) PC並びに使用溶剤の構造式
(10) 溶解パラメータ
(11) 結晶性プラスチックの発生原因
1-1-3 溶解パラメータの算出
1-1-4 破面の特徴
1-1-5 試験方法
(1) 試験片の調整
(2) 試験治具
(3) その他の試験法
1-1-6 再現試験
1-1-7 ソルベントクラックの温度依存性
1-1-8 原因究明の流れ
1-2 環境応力割れ
1-2-1 不具合事例
1-2-2 発生メカニズム
(1) 全般
(2) POM製射出成形品の複合腐食試験により発生したクラック
・クラックの発生過程並びに発生メカニズム
(3) PA66射出成形品の融雪塩により生じたクラック
1-2-3 破面の特徴
1-2-4 対策
1-2-5 使用プラスチック材料で明確とすべき内容
1-2-6 再現試験
1-2-7 一因子としての吸水率の予測
(1) フィックの第二拡散式から導かれる吸水率の予測
(2) 実測データの重回帰分析による吸水率の予測
1-3 クリープ
1-3-1 発生メカニズム
1-3-2 不具合事例
1-3-3 破面の特徴
1-3-4 不具合解析事例
1-3-5 再現試験結果による寿命予測
1-3-6 劣化加速条件の設定
1-3-7 PPの引張クリープ破壊データによる寿命予測式の取得
1-3-8 クリープひずみにおける寿命予測式の取得
1-4 疲労破壊
1-4-1 発生メカニズム
1-4-2 破面の特徴
1-4-3 疲労試験の種類
1-4-4 PBT(GF30)の引張疲労試験
1-4-5 耐熱グレード・PA66(GF30)の引張疲労試験
1-4-6 一般グレード・PA66(GF30)の曲げ疲労
1-5 溶剤浸漬法によるプラスチック成形品の応力測定
1-5-1 プラスチックの耐薬品性
1-5-2 アタック溶剤並びに非アタック溶剤の探索
1-5-3 アタック溶剤による臨界応力の把握
1-5-4 製品における臨界応力の確認
1-5-5 確認を行う製品のn数と応力データの処置
2.ゴム
2-1 寿命予測のための把握すべき特性
2-2 EPDM製シール部品の劣化と把握する特性
2-2-1 圧縮永久ひずみ試験
2-2-2 圧縮永久ひずみデータによるへたり性の寿命予測
2-2-3 劣化加速条件の設定
(1) 劣化加速条件の算出
2-2-4 圧縮永久ひずみと各種物性との比較
(1) ヒステリシスロス
(2) 圧縮弾性率
(3) 圧縮永久ひずみとヒステリシスロスの関係
(4) 圧縮永久ひずみと圧縮弾性率の関係
(5) ヒステリシスロスと圧縮弾性率の関係
(6) 硬さと圧縮弾性率の関係
2-2-5 ゴムポリマーの酸化劣化反応
2-3 ダイアフラム用ゴム材料の寿命予測
2-3-1 劣化加速条件の設定
2-4 ゴムの不具合とその対策
3.接着仕様
3-1 接着メカニズム
3-1-1 接着仕様における共有結合の事例
3-1-2 水素結合による接着事例(シアノアクリレートの重合メカニズム)
3-1-3 ファンデルワールス力
3-2 接着仕様における劣化因子
3-2-1 熱による劣化
3-2-2 水による劣化
3-2-3 熱サイクルによる影響
3-2-4 紫外線による接着剤の分解波長
3-3 1液エポキシ接着剤のせん断クリープ破断応力データによる寿命予測
3-3-1 ラーソンミラーパラメータ式の右辺がT-t線図の傾きに等しいことの証明
3-3-2 破断応力・破断時間・試験温度の予測
3-4 疲労試験データにおける寿命予測