2020年12月11日(金)
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イスラームは世界宗教であり、民族を問わず、入信した者はだれでも等しくムスリムとなる。したがって、ムスリムの住まう環境も基層的な食文化も多様であり、また飲食のハラールに関する解釈や行動も多様性に富む。費用対効果を考えながら、自社ではどのような対応が最適なのかを見極める必要がある。
ムスリム対応にあたっては、ハラール認証が注目されがちである。たしかに海外のムスリム市場への輸出や進出を目指す場合は、ハラール認証が必要であることが多い。しかしハラール認証には、さまざまな規格や団体が関わっており、ターゲット市場によって必要な認証も要件も変わってくる。認証を取得するには、まずターゲットを見定め、自社の商品やサービスに合わせて、適切な認証を選ばなければならない。
また実際には、認証を取得しなくても、相当数のムスリム消費者に対応することが可能である。特にインバウンドビジネスや日本に在住しているムスリム向けの国内市場では、認証取得りもむしろ、ムスリム消費者とコミュニケーションをとって信頼関係を築きながらニーズに合った商品開発で選択肢を増やし、誠実な情報開示によって対応レベルを示すことで、消費者自身に選んでもらえる環境づくりが重要である。
本セミナーでは、ハラールをめぐる認証制度の概要とともに、認証だけでないハラールやハラール解釈の多様性とはどういうことかを総合的に扱う。配慮不足にも過剰防衛にも陥らず、対象となる市場を定めて、そのニーズに合った商品やサービスを開発すること。誠実で過不足のない情報開示によって、どこまでできるのか対応レベルの限界を明示しつつ、それでもよいと考えるムスリム消費者に選んでもらうこと。そのために何に注意して情報を開示するのか、どのようにコミュニケーションをとればよいのかを考える。
1.はじめに:配慮不足と過剰防衛の間でバランスをとること
2. イスラームとムスリム
2-1.ムスリム市場の多様性
2-2.六信五行:礼拝と断食の概要と対応
2-3.行為の五分類とハラール(合法)・ハラーム(禁止)
3 ハラールの基礎と解釈の多様性
3-1.食の禁忌の原則とハラールの基礎
3-2.不浄と浄め
3-3.アルコールをめぐる解釈の多様性
3-4. 屠畜方法とハラール肉
3-5.魚介類の解釈の多様性
3-6.遺伝子組み換え作物に対する態度
3-7.添加物と交差汚染:「疑わしいもの」の拡大
4 ハラールをめぐる認証制度
4-1.ハラール肉と屠畜証明
4-2.ハラール認証制度とハラーラン・タイイバン
4-3.世界の主要な認証規格
4-4.認証機関(CB)同士の相互承認と認定機関(AB)による認定
4-5.日本の主要な認証機関
4-6. ハラールに関連する諸認証:ムスリムフレンドリーの意味
5 認証に頼らないムスリム対応:情報開示とコミュニケーション
5-1.ハラールはハラール認証より広い
5-2.IT技術・検査技術の発達と風評被害の広がり方
5-3.情報戦略の重要性:情報開示と情報収集
5-4.いちばん大事なこと:ムスリムの声を聞く
5-5.マイクロインフルエンサーによるバイラルマーケティング
5-6.すぐできる対応:肉および禁忌食材使用を明示する
5-6-1.使用食材の表示法:ピクトグラム、禁忌食材表、多言語対応
5-6-2.不使用であることの表示法:「~フリー」表示と分冊メニュー
5-7.一歩進んだ対応:食材・食品のハラール化、調理器具等の区別
6 おわりに:多様な食嗜好と禁忌をもつ人々に開かれた社会を目指して
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