高強度かつ低密度(軽量)、さらに低負荷環境という特徴を持つセルロースナノファイバー利用の研究が急速に進展している
本セミナーでは、主にセルロースナノファイバー複合材料の開発動向に焦点をあてて4名の講師が解説する
セルロースナノファイバーの応用を考えるには、まずセルロースとは何なのか?さらに、一体どのように生物からつくられ、どのようにファイバーが形成されるのかというところから理解する必要がある。 さもないと、「力ずくでナノ化」し、「力ずくで利用」を考えることになる。石油合成品と何が違い、そのためにどのような基礎コンセプトが応用の発想に必要なのか? 本講座が、やさしいセルロースナノファイバーへの誘いになれば幸いである。まず、なぜいま生物素材なのか?および、その特性を概説する。次いで、天然繊維の代表であるセルロースに関して、これまで製造が困難であった「ナノファイバーとはどういうものか」 ということを基礎から概説する。次に、トップダウン的加工法として最近開発した、天然セルロース繊維を表面から分子・ナノレベルの分子集合体を引き剥がす、水のみによる微細化およびナノ分散水化法(水中カウンターコリジョン法)およびその応用例を紹介する。さらに、セルロースナノファイバーを用いる複合材料化について、「ナノファイバーは細ければ細いほど利点があるのか?」の観点から検討する。1.はじめに
セルロースナノファイバーの様々な調製技術について、基礎と実用化に向けての動向を紹介する。また、ファイバーをフィラーとする複合材料やナノコンポジットの基礎を学ぶことにより、セルロースナノファイバーを用いる複合材料への理解を深める。加えて、セルロースナノファイバー含有高分子複合材料の代表的な調製方法を紹介し、実用性の高い技術を中心に最近のトピックスを講演者の研究成果を交えて示す。1.セルロースナノファイバーの作製技術と特性
セルロースナノファイバー(CNF)の製造は、一般に水中で行われます。これを熱可塑性樹脂に複合化するには脱水の必要がありますが、CNFは高い保水力をもつことからゲル化しハンドリングが悪く、その濾水・脱水は困難を極めます。そこで我々は、熱可塑性樹脂強化用セルロース繊維として出発原料に数十μmの直径のパルプを用いました。これを化学変性し、疎水性を付与したパルプはCNFに比べ濾水性が高く、さらに熱可塑性樹脂との溶融混合時のせん断応力により容易にナノ解繊をすることが可能となります。この解繊性に加え、化学変性されたCNFは耐熱性の向上と樹脂との相容性の向上もコントロールすることが可能となります。本講演では、弊所においてこれまで取り組んだ検討例、そして幾つかの変性CNF強化複合材料の性能、特徴などを紹介します。参加者の方々には、化学変性によるセルロースの解繊性、複合材料の物性変化、CNF/樹脂の相容性の変化などを知っていただく機会としたいと思います。1.セルロースナノファイバーについて
次世代のバイオマス素材として注目されているセルロースナノファイバー(CNF)とゴムの樹から採取される天然ゴム(NR)との複合化により作製したバイオマス比率の高いCNF強化ゴム材料について、CNFの分散性を向上させるための複合化技術、さらにはCNFとゴムとの界面親和性を向上させるための結合処理剤の添加効果、CNFの表面処理などについて紹介する。また、CNFの形状がゴム材料の物性に及ぼす影響についても紹介する。さらに、CNF強化ゴム材料のゴム製品への応用の可能性について述べる。1.はじめに