― ヒトはいかに暑さ、寒さ感覚を知覚するか?そして、快適な温熱環境をもたらすには?
近年の皮膚表面上の温度受容・脳研究から温熱的快適感のメカニズムを探求し、
人体の温熱生理反応を予測する人体熱平衡モデルを通じて、
「より心地良い車内環境をもたらす」車内空調の開発等に寄与できる知見・評価要素を習得。
脳や皮膚には特定の温度に対して神経が活動する温度受容メカニズムが存在する。ところがヒトは異なる温度受容を持つ。 温熱的快適感とよばれる暑さ、寒さ感覚がそれであり、皮膚/中枢に存在する温度受容体の情報を統合し、いわば生存の ための環境温度の価値判断をする温度受容であると考えられる。しかし、その生物学的な実態は明らかではない。 講演では体温調節の基本的な概念を習得するとともに、温熱的快適感に関わる最近の知見を総括し、基礎や応用研究に つながる情報を提供したい。
得られる知識:
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① 体温調節の基礎知識
② 体温研究のための基本的な方法論
③ 温熱的快適感に関わる最近の研究や方法論の習得
プログラム:
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1. 体温調節の一般的知識
2. 皮膚表面や脳での温度受用
2.1 TRPチャネル、皮膚の温度センサーとしての役割
2.2 中枢での温度受容
3. 温熱的快適感
3.1 現在に至る研究の流れ(心理学から生物学へ)
3.2 研究結果をどのように応用していくか
□ 質疑応答 □
概説(抜粋):
< 項目1~2:体温調節の一般知識と温度センサーについて >
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体温調節の目的は、温熱的外乱(例えば運動や環境温度の変化)の影響をうけないよう生体の温度を一定に保つ
ことである。この営みは全ての生物が行っていることであり、下等生物—高等生物、植物—動物、
変温動物—恒温動物を問わない。全ての生物が共通して行っている体温調節は生存のための環境条件を
選択することである。
変温、恒温動物が共通して行う体温調節は、行動性体温調節とよばれる。これは体温を維持するために必要な環境を
探索したり、作ったりする行為である。亀の甲羅干、鳥の営巣、人間が衣服を着たり、エアコンをつけたりするのも
行動性体温調節の一つである。人では行動性体温調節と温熱的快適感が密接に関わっていると予想されている。
< 項目3:温熱的快適感 >
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分子レベルでの温度受容、センサーの解析は進んできたが、特に最近の温度受容イオンチャネル、温度TRPの
研究成果は目覚しい。しかし、実際の我々の温度感覚とのつながりは明らかではない部分も多い。
皮膚からの温度感覚は、痛覚と類似した神経回路を通って中枢に至り、温度感覚として意識下にのぼると考えられ
ている。しかし、温熱的快適感がどのように形成されるかは未だ明らかではない。
脳研究から得られた最近の知見を紹介する。
自動車などの輸送機器において、複雑で非定常な温熱環境下に置かれた乗員の温熱的な快適性を評価するためには、 温熱環境の物理的なパラメータを適切に把握したうえで、人体の温熱生理反応を把握する必要がある。 しかし、それらを実験的に計測するためには、多種にわたる項目の計測と多くの被験者が必要となるため、 工業製品の開発に適さない。 このため、人体の温熱生理反応を予測する人体熱平衡モデルは、そうした問題点を解決する有効な手段であり、 これにより初めて開発に寄与できる評価が可能となる。 本講座では、そうした予測を用いて設計開発を行う技術者にとって不可欠となる基礎知識の習得を狙いとしている。
得られる知識:
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・人体熱平衡モデルで用いられている代表的な人体モデルの理論と計算方法
・温熱評価をする際に基礎となる理論と、自動車などでよく用いられる温熱評価手法の本質
プログラム:
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1.人体熱平衡モデルの基礎理論
1.1 人体の温熱生理反応と人体熱平衡計算
1.2 分布定数系に基づく人体熱平衡モデル
1.3 集中定数系に基づく人体熱平衡モデル
2.温熱評価指標と開発設計への適用
2.1 様々な温熱指標
2.2 ISOで提唱されている温熱環境評価指標:Teq
2.3 人体の温熱生理反応を考慮した温熱環境評価指標:SET*
□ 質疑応答 □
・講義終了後に質疑応答時間を設けますが、
講義中に不明な点あれば挙手をしてお尋ねください。