2025年11月13日(木)
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従来は、人口減少に伴う国内市場の縮小、省エネルギーにより電力需要は減少すると考えられてきた。日本は2040年度に温室効果ガス排出量を73%削減するという意欲的な目標を第7次エネルギー基本計画において掲げている。しかし、AI(人工知能)の発展、データ・センターの増設、半導体工場の新設等により、電力需要は、2040年には1兆キロワット時を超えると考えられるようになってきた。電力広域的運営推進機関(OCCTO)の見通しによると、全国のデータ・センターと半導体工場向けの電力需要は、2025年度の36億キロワット時から2034年度には514億キロワット時へと大幅に増加する。世界全体を見渡しても、電力需要は増加基調にある。その理由としては、AI(人工知能)の普及、データ・センターの新設等による電力需要の増加が挙げられる。AIによる検索は、通常のグーグルによる検索と比較して10倍もの電力が消費される。
他方、太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギーの普及により、電力供給の出力が季節、時間、天候により激しく変動し、電力の需給調整が一段と難しくなっている。再生可能エネルギーの出力変動の補完として、天然ガス火力発電の重要性が増し、三菱重工業のガス・タービンの受注残高は過去最高を記録している。火力発電への依存により、ロシアによるウクライナ侵攻以降の天然ガス価格の上昇、円安によって世界的にも電気料金は高止まりしている。日本は政府による補助金が削減された2025年4月以降の電気料金は上昇した。
電力価格については、2025年9月時点において、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油価格は1バレル65ドル、2025年9月のLNGスポット(随時契約)価格は百万Btu(ブリティッシュ熱量単位)当たり12ドル、発電用一般炭価格は2025年6月には1トン当たり109ドルと、2022年春と比較すれば落ち着いているものの、2020年と比較すれば2倍の高値となっている。電力価格は、原燃料費調整制度(燃調)により、3ヵ月前の平均価格が基礎となることから、円安に戻り、LNG価格、石炭価格の上昇等により、電気料金が引き上げられる。
2022年3月22日には、福島県沖の地震による火力発電の停止、寒波の来襲による太陽光発電の出力低下により、「電力需給逼迫警報」が初めて出された。2024年7月上旬も、想定外の気温の上昇、火力発電所のトラブルもあり、東京電力は、中部電力から電力融通を受けている。太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの割合の増加、相次ぐ火力発電の休廃止等により、太陽光発電の出力が低下する冬と夏の明け方と夕方に、電力需給逼迫が恒常化している。欧州諸国は、2024年12月に気温低下にもかかわらず、日照条件が悪く、風が吹かないために、電力スポット価格が高騰した。逆に電力需要が減少する春と秋には、昼間の太陽光発電による電力が余剰となり、九州電力、四国電力等が再生可能エネルギーによる発電を止める出力制御を行っている。出力変動が激しい再生可能エネルギーの普及に対応した大容量蓄電池の技術開発、各地域間の電力融通を目的とした送電系統の増設は巨額の設備投資が必要となる。総合商社、エネルギー企業は、蓄電池ビジネスに本腰を入れ始めており、東京電力、関西電力等も数千億円単位の送電網整備、変電所増設を計画している。さらに、「GX2040ビジョン」により、データ・センターを太陽光発電の豊富な地方に建設し、データを光ファイバーによって首都圏に送る、「ワット・ビット連携」も動き出す。
2016年に電力小売全面自由化が始まり、700社を超える新電力の参入が生まれ、自由化の成果が生まれている。しかし、多くの新電力は自社の発電所を持っておらず、日本卸電力取引所(JEPX)から電力を調達していることから、2022年には電力スポット価格の高騰により、家庭用電気料金は1キロワット時当たり10円~20円程度に設定されていることから、仕入れ値が販売価格を上回る逆ザヤが発生して、多くの企業は事業撤退している。逆に、2023年に入り、日照条件のよい昼間の電力スポット価格は1キロワット時当たり下限価格の0.01円まで下落している。卸電力スポット価格は、寒波が来襲した2021年1月に1キロワット時当たり251円を記録し、その後上限価格を80円に制限したものの、上限価格まで何度もスポット価格は高騰している。卸電力市場のスポット価格の最低値は、電力需要が落ち込む夜中から太陽光発電がフル稼働する昼間に変わった。夕方の最高値が1キロワット時当たり30円以上となることも多い。既存の大手電力企業にとっても、円安による燃料価格の高騰、原子力発電所再稼働が不透明なこと等もあり、2025年の秋に、寒波が来襲すると、日本のみならずアジア諸国、欧米諸国においても電力需給が逼迫する懸念が強まっている。ドイツをはじめとした欧州諸国が、ロシア産天然ガス依存脱却に政策を切り替える限り、欧州諸国とアジア諸国によるLNG争奪戦が熾烈化し、将来的にもLNGスポット価格、石炭価格は高騰することが予想される。
AIの驚異的な普及により、今後の日本と世界の電力需要はどうなるのか。トランプ政権の誕生による関税引き上げと世界経済の低迷懸念、トランプ政権によるイランの核施設攻撃等、LNG価格、原油価格、石炭価格の不透明感が続くなか、電力料金は2026年冬以降にどうなるのか。電力先物市場、オプション市場の拡大、政府による電気料金補助金の今後の見通しを含め、電力自由化後の大手電力企業のとるべき事業戦略はなにか。電力をスポット市場から調達せざるを得ない新電力の生き残り戦略はどうすべきか。電力を取り巻く状況が複雑化するなか、2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画を踏まえ、脱炭素とエネルギー安全保障と電力の安定供給の両立によって生み出される、蓄電池、送電線等の新たなビジネス・チャンスを分かりやすく詳説する。
1.トランプ政権によるLNGをはじめとする資源エネルギー -価格の今後
2.AI(人工知能)の普及による想定外の電力需要の増加 -火力発電補完
3.LNG価格、石炭価格は再び上昇するのか -電力料金へのインパクト
4.電気料金への補助金の見直し -電力需要の増加と脱炭素との調和
5.電力価格の中長期の見通し -原子力発電の再稼働とLNG価格の今後
6.電力の需給逼迫は今後も発生するのか -再生可能エネルギーの出力変動
7.電力料金上昇に対する産業界に求められる対応 -AIとデータ・センター
8.卸電力市場の今後の見通し -電力先物市場の拡大と効果的な利用
9.新電力の経営の現状と今後の見通し -FIT制度からFIP制度の運用
10.新電力に求められる生き残り戦略 -再生可能エネルギーと先物市場
11.電力安定供給のための火力発電建設への見通し -天然ガス火力への期待
12.地震国日本における原子力発電の今後の見通し -エネルギー基本計画
13.再生可能エネルギーの普及にともなう事業機会 -蓄電池ビジネス
14.大手電力企業のとるべき経営戦略 -送電系統整備と海外の電力事業
□ 質疑応答 □