第1部:分子の自己組織化を基盤とするフォトン・アップコンバージョンの化学
【12:30~14:30】
フォトン・アップコンバージョン(UC)は、太陽電池の高効率化や可視光駆動型の光触媒開発に結びつく可能性のある光子エネルギー変換技術として期待されている。とりわけ三重項―三重項消滅(triplet-triplet annihilation, TTA)機構に基づくアップコンバージョン(TTA-UC)は、太陽光レベルの弱い励起光を利用できるなど、優れた特徴を有する興味を集めている。本講演では、TTA-UCを中心に、有機光化学の基礎、従来の研究例、問題点、さらに“分子の自己組織化”概念の導入による問題の克服と最近の展開について紹介する。
1. フォトン・アップコンバージョンの基礎
1.1 フォトン・アップコンバージョンとは
1.2 光化学の基礎
1.3 電子遷移と光緩和過程
1.4 光吸収と発光(蛍光、リン光)
2. 三重項―三重項消滅に基づくフォトン・アップコンバージョン(TTA-UC)
2.1 三重項―三重項消滅(TTA)現象と遅延蛍光
2.2 TTA-UCの原理と機構
2.4 溶液系における分子の拡散・衝突機構に基づくTTA-UC
2.5 高分子マトリックス中におけるTTA-UC
2.6 ナノ粒子系におけるTTA-UC
2.7 従来のTTA-UCにおける問題点
3. 分子組織化に基づく新しいTTA-UCの化学
3.1 分子の自己組織化と光化学
3.2 分子の自己組織化とTTA-UCの融合
3.3 π電子系液体、蛍光性イオン液体におけるTTA-UC
3.3 自己組織化系(超分子ゲル、分子膜)におけるTTA-UC
3.4 高分子金属錯体(MOF)におけるTTA-UC
<質疑応答・名刺交換>
第2部:アップコンバージョン蛍光体による赤外可視波長変換とエネルギー応用への可能性
【14:40~15:40】
長波長の光を短波長に変換することのできるアップコンバージョン蛍光体は、未だにその利用は限られているが、発光効率の向上次第で応用の拡大が期待される。特に太陽電池への応用には高輝度化が必須であり、他にも解決すべき課題がいくつかある。本講演では、アップコンバージョン蛍光体を用いた赤外-可視変換光発電の実施例を紹介し、発光メカニズムの原理と特徴、ならびに応用に向けて想定される課題とその解決方針を述べる。
1. アップコンバージョン蛍光体を用いた赤外線からの発電実施例
1.1 希土類タンタル複合酸化物高輝度アップコンバージョン蛍光体
1.2 アップコンバージョン蛍光体と太陽電池を用いた赤外発電試験
1.3 エネルギー変換効率向上に向けた具体的な課題
2. 重希土類系アップコンバージョン蛍光体の発光原理と特徴
2.1 希土類イオンの電子配置とf軌道の分裂
2.2 Yb3+励起型アップコンバージョン発光のメカニズム
2.3 代表的なアップコンバージョン蛍光体材料の具体例
2.4 重希土類系アップコンバージョン蛍光体のメリット・デメリット
3. 太陽電池への応用に向けた課題と解決方針
3.1 利用波長の拡大
3.2 光束密度の増大
3.3 吸収確率の向上
3.4 非輻射遷移の低減
3.5 発光方向の制御
4 総括と展望
<質疑応答・名刺交換>
第3部:光利用の可能性を拡げる光アップコンバージョン:応用に適する材料形態開発とそのキネティクス
【15:50~16:50】
光アップコンバージョンは、光エネルギーの利用可能性を拡大する、フォトン・エンジニアリングの基本技術である。近年、これが太陽光などの非コヒーレント光(非レーザー光)に対して有意な効率で行うことが可能になり、注目を集めている。本講演では、本技術の特長・背景等を説明し、講演者らが独自に取り組んできた試料開発と、それらの試料から明らかにしてきた特異なキネティクスとメカニズムについて説明する。
※講演項目準備中