地球化学コードの1つであるPHREEQCは、すでに国内外において多くの研究者、技術者に利用されています。PHREEQCは一般公開されている地球化学コードでありながら、一般的な化学平衡計算に加えて、イオン交換や表面錯体といった豊富な吸着モデルや、反応速度解析、一軸移流拡散解析とも連成が可能であることから、これを使いこなすことができれば幅広い解析に有用であることは間違いありません。しかしながら、一般公開ソフトであるが故にインターフェースはそれほど使いやすいと仕様であるとは言い難く、また、500ページにも及ぶ英文マニュアル以外に、特に国内にはその使い方を解説する良書がありません。
本書は、PHREEQCの初心者を対象として、その基本的な使い方の習得を目指した入門書です。現在広く用いられているPHREEQCには、ver.2とver.3が存在しますが、本書ではその両方に共通した基本的な事項を解説しました。また、地球化学コードを使いこなすために最低限必要であると考えられる化学平衡計算や表面錯体モデルの知識などもコンパクトに解説を加え、PHREEQCの使い方と共にそれらの概念もマスターできるように心がけました。PHREEQCの使い方をマスターする秘訣は、とにかく多くの例題に触れてプログラムを実行していただくことであると考えていますが、本書ではPHREEQCに付随している例題のほかに、オリジナルな例題もいくつか加えて解説しています。
本書がこれからPHREEQCを使ってみようと考えていらっしゃる読者の一助となれば大変うれしく思います。
1.PHREEQCとは
1.1 PHREEQCの歴史
1.2 PHREEQCで解析できること
1.3 ver.2とver.3の違い
1.4 PHREEQC以外の汎用的な地球化学コード
1.5 PHREEQCを学ぶための参考文献
2.計算を始める前に
2.1 PHREEQC ver.3のダウンロード
2.2 PHREEQC ver.3のインターフェース画面
2.3 計算の流れとファイル形式
2.4 データベースの選択
2.5 代表的なキーワード
2.6 データ入力に関する約束事項
3. 溶液平衡
3.1 例題:「純水」の化学平衡計算
3.2 例題:アンモニア溶液のpH計算
3.3 活量の概念とPHREEQCでの取り扱い
3.4 平衡定数の概念と温度影響
3.5 錯体平衡における平衡定数の表し方
3.6 PHREEQCにおけるさまざまな濃度の表し方
3.7 化学種データベース補充の方法
4. 沈殿平衡
4.1 溶解度積と飽和指数
4.2 例題:goethiteの沈殿生成
4.3 固相データベース補充の方法
4.4 pHを一定にするための固相の定義
4.5 例題:海水組成の計算(ex1)
5. 解析結果を出力する方法
5.1 Outputシートへの出力内容を変更する方法
5.2 新たなファイルへ出力する方法
5.3 グラフ形式で出力する方法
6. バッチ反応系の解析
6.1 溶液の混合
6.2 溶液への添加
6.3 例題:酸性廃水の中和解析
6.4 溶液の温度変化
7.平衡を理解するためのグラフ
7.1 pH-LogCダイヤグラム
7.2 水酸化物沈殿のpH-logMダイヤグラム
8. イオン交換反応
8.1 イオン交換モデルの概要
8.2 イオン交換種データベース補充の方法
9. 表面錯体反応
9.1 表面錯体モデルの概要
9.2 拡散層モデル(DLM)の概要
9.3 表面錯体種データベース補充の方法
9.4 例題:水酸化第二鉄への亜鉛の表面錯体形成(ex8)
9.5 例題:水酸化第二鉄へのヒ酸の表面錯体形成
9.6 例題:収着等温線図の作成(ex19)
10. 反応速度解析
10.1 例題:炭酸カルシウムの溶解速度解析
10.2 例題:Fe(II)のFe(III)への酸化速度解析(ex9)
11. 移流拡散解析
11.1 移流拡散解析の概要
11.2 例題:イオン交換を伴う移流拡散解析(ex11)
APPENDIX
表I キーワード一覧
表II ベーシック言語一覧
表III 例題一覧
参考文献
PHREEQC,フリーク,プリーク,地球化学コード,USGS,Ver2,Ver3,吸着,反応速度,解析,本,マニュアル,書籍