常識に囚われない心理と思考力
(~講演にあたり演者より~)
人工知能によって、世界中で同時多発的にイノベーションが起こりつつある。しかし、大企業では、クレステンセンの言う、イノベーションのジレンマから脱出できない状態で、イノベーションとは無縁の企業が多い。それを裏付けるように、昨今飛躍的に大きくなった誰もが知っているような企業は、殆どベンチャー企業である。この問題の本質はまさにクレステンセンの指摘の通りであり、自らイノベーションを阻害する仕組みを作っていると言わざるを得ない。そもそもイノベーションはロジカルに起こるものでなく、ヒューリステックに起こるケースが多々あり、合議制の下では却下されることが多々ある。
現在、企業内に如何にイノベーションを起こすかについての実験的試みを行っている。本セミナーでは、企業内の阻害要因(壁)を如何に乗り越え、企業内にイノベーションを起こすかの正に成功直前の事例を紹介する。
(~講演にあたり演者より~)
材料科学の研究者は独自の研究テーマ、すなわち、「潜在している社会のニーズ 」と「それを満たす材料研究のアイデア」の独自の組み合わせを探し求めよう。独自の研究テーマを見つけたら研究に集中する。「それを満たす材料研究のアイデア」が論理的に説明できるものでなくても構わない。直観を重視して研究を実施する。本質的な問題にぶつかったら、そのテーマは断念して、また新しい独自の研究テーマを探し求める。この研究のサイクルを研究者として成功するまで回し続けよう。
研究管理者は、上述の研究者のライフスタイルを非公式の研究活動として、一定の割合で保証すべきである。顕在している社会のニーズに基づいた研究や、流行の研究テーマについて、研究を進めることは、研究組織として必要である。 これらの研究テーマを公式の研究テーマとして進めつつ、 一定の割合で非公式の研究活動を認め、芽が出たら、公式テーマに取り上げていただきたい。
(~講演にあたり演者より~)
イノベーションは「『できるかできないか』よりも『思いつくかつかないか』の問題である」と言われるが、化粧品開発においては特にその要素は大きい。イノベイティブなヒット商品の開発の鍵は、顧客目線で常に問題意識を持って考えることであり、顧客の真のニーズを掴んだ新たなアイディアを思いつけるかどうかに全てがかかっている。そのアイディアを、研究者や企画・開発者はどのようにして商品化に結び付け、世の中に送り出していくべきだろうか。そこには技術のハードルよりももっとやっかいな見えない壁、常識の壁が立ちはだかる。
演者は研究所在籍中の数多くの化粧品開発の経験から研究開発者が持つべきリーダーシップを学んだが、それはのちの商品開発部長、研究所長、品質保証部長、そして経営層として必要とされるリーダーシップと重なるものでもあった。
当日は、演者自身が経験した化粧品開発過程での思わぬハードルと商品化までの道のりを事例に、イノベーションを成功させるための「見えない壁を崩す力」、「共感をもたらすリーダーシップ」の重要性について述べる。