和光大学 経済経営学部 教授
岩間 剛一 氏
【略歴】
<他の所属>
東京大学工学部非常勤講師(金融工学、資源開発プロジェクト・ファイナンス論)
三菱UFJリサーチ・コンサルティング客員主任研究員
石油技術協会資源経済委員会委員長
<経歴>
1981年東京大学法学部卒業。東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。東京銀行本店営業第2部部長代理(エネルギー融資、経済産業省担当)。東京三菱銀行本店産業調査部部長代理(エネルギー調査担当)。出向:石油公団企画調査部:現在は石油天然ガス・金属鉱物資源機構(資源エネルギー・チーフ・エコノミスト)。出向:日本格付研究所(チーフ・アナリスト:ソブリン、資源エネルギー担当)。2003年から現職
<著書>
「資源開発プロジェクトの経済工学と環境問題」、「ガソリン本当の値段」、「石油がわかれば世界が読める」、その他、新聞、雑誌等への寄稿、テレビ、ラジオ出演多数
非会員: 46,200円(税込)
会員: 39,600円(税込)
学生: 46,200円(税込)
46,200円 (Eメール案内希望価格:1名39,600円,2名46,200円,3名67,100円)
※Eメール案内を希望されない方は、「46,200円×ご参加人数」の受講料です。
※Eメール案内(無料)を希望される方は、通常1名様46,200円から
★1名で申込の場合、39,600円
★2名同時申込の場合は、2名様で46,200円
★3名同時申込の場合は、3名様で67,100円
※4名以上お申し込みの場合は、ご連絡ください。
※2名様以上の同時申込は同一法人内に限ります。
※2名様以上ご参加は人数分の参加申込が必要です。
従来考えられてきた、日本市場の縮小と省エネルギーによる電力需要の削減という前提が揺らいでいる。日本は2040年度に温室効果ガス排出量を73%削減するという意欲的な目標を第7次エネルギー基本計画において掲げている。しかし、電力広域的運営推進機関(OCCTO)は、2034年度の電力需要が2024年度見通しよりも6.2%増加すると見直しを行っている。世界全体を見渡しても、電力需要は増加基調にある。その理由としては、AI(人工知能)の普及、データ・センターの新設、半導体工場の増設による電力需要の増加が挙げられる。AIによる検索は、通常のグーグルによる検索と比較して10倍もの電力が消費される。他方、太陽光発電、風力発電等の再生可能エネルギーの普及により、電力供給の出力が季節、時間、天候により激しく変動し、電力の需給調整が一段と難しくなっている。再生可能エネルギーの出力変動の補完として、天然ガス火力発電の重要性が増し、三菱重工業のガス・タービンの受注残高は過去最高を記録している。火力発電への依存により、ロシアによるウクライナ侵攻以降の天然ガス価格の上昇、円安によって世界的にも電気料金は高止まりしている。日本は政府による補助金が削減され、2025年4月以降の電気料金は上昇している。
電力価格については、2025年6月時点において、WTI(ウェスト・テキサス・インターミディエート)原油価格は1バレル60ドル、2025年4月のLNGスポット(随時契約)価格は百万Btu(ブリティッシュ熱量単位)当たり12ドル、発電用一般炭価格は2025年4月には1トン当たり98ドルと、2022年春と比較すれば落ち着いているものの、2020年と比較すれば2倍の高値となっている。電力価格は、原燃料費調整制度(燃調)により、3ヵ月前の平均価格が基礎となることから、円安に戻り、LNG価格、石炭価格の上昇等により、電気料金が引き上げられる。2022年3月22日には、福島県沖の地震による火力発電の停止、寒波の来襲による太陽光発電の出力低下により、「電力需給逼迫警報」が初めて出された。2024年7月上旬も、想定外の気温の上昇、火力発電所のトラブルもあり、東京電力は、中部電力から電力融通を受けている。太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの割合の増加、相次ぐ火力発電の休廃止等により、太陽光発電の出力が低下する冬と夏の明け方と夕方に、電力需給逼迫が恒常化している。欧州諸国は、2024年12月に気温低下にもかかわらず、日照条件が悪く、風が吹かないために、電力スポット価格が高騰した。逆に電力需要が減少する春と秋には、昼間の太陽光発電による電力が余剰となり、九州電力、四国電力等が再生可能エネルギーによる発電を止める出力制御を行っている。出力変動が激しい再生可能エネルギーの普及に対応した大容量蓄電池の技術開発、各地域間の電力融通を目的とした送電系統の増設は巨額の設備投資が必要となる。
2016年に電力小売全面自由化が始まり、700社を超える新電力の参入が生まれ、自由化の成果が生まれている。しかし、多くの新電力は自社の発電所を持っておらず、日本卸電力取引所(JEPX)から電力を調達していることから、2022年には電力スポット価格の高騰により、家庭用電気料金は1キロワット時当たり10円~20円程度に設定されていることから、仕入れ値が販売価格を上回る逆ザヤが発生して、多くの企業は事業撤退している。逆に、2023年に入り、日照条件のよい昼間の電力スポット価格は1キロワット時当たり下限価格の0.01円まで下落している。卸電力スポット価格は、寒波が来襲した2021年1月に1キロワット時当たり251円を記録し、その後上限価格を80円に制限したものの、上限価格まで何度もスポット価格は高騰している。卸電力市場のスポット価格の最低値は、電力需要が落ち込む夜中から太陽光発電がフル稼働する昼間に変わった。夕方の最高値が1キロワット時当たり30円以上となることも多い。既存の大手電力企業にとっても、円安による燃料価格の高騰、原子力発電所再稼働が不透明なこと等もあり、2025年の夏が例年と同じく猛暑に見舞われると、日本のみならずアジア諸国、欧米諸国においても電力需給が逼迫する懸念が強まっている。ドイツをはじめとした欧州諸国が、ロシア産天然ガス依存脱却に政策を切り替える限り、欧州諸国とアジア諸国によるLNG争奪戦が熾烈化し、将来的にもLNGスポット価格、石炭価格は高騰することが予想される。AIの驚異的な普及により、今後の日本と世界の電力需要はどうなるのか。トランプ政権の誕生による関税引き上げと世界経済の低迷懸念、トランプ政権によるイランの核施設攻撃等、LNG価格、原油価格、石炭価格の不透明感が続くなか、電力料金は2025年秋以降どうなるのか。電力先物市場、オプション市場の拡大、政府による電気料金補助金の今後の見通しを含め、電力自由化後の大手電力企業のとるべき事業戦略はなにか。電力をスポット市場から調達せざるを得ない新電力の生き残り戦略はどうすべきか。電力を取り巻く状況が複雑化するなか、2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画を踏まえ、脱炭素とエネルギー安全保障と電力の安定供給の両立によって生み出される、蓄電池、送電線等のビジネス・チャンスを分かりやすく解説する。