自動車の軽量化に向けた、CFRPの最新動向から量産プロセス(RTM、LLD、PCM、SMC)と問題、二次加工技術まで解説します。
第一部 CFRPの成形・加工技術の現状と展望
本講では、炭素繊維強化プラスチック(CFRP)について基礎から最新技術まで解説します。CFRPはボーイング787の機体やEV車BMWi3の車体など軽量高強度部品として使われ、自転車、ゴルフ、テニスなどのスポーツ用品ではCFRP抜きには勝利はありません。しかし炭素繊維は鉄鋼の10倍以上の価格で、CFRPの成形時間は鋼のプレスに比べて100倍以上かかるという問題がありました。それでもノートPC筐体、一眼レフ、掃除機にCFRPが使われ始めています。最近では熱可塑性樹脂を使った熱可塑性CFRP(CFRTP)をホットプレスで自動車部品を作製することも始まっています。一方炭素繊維は焼入れ鋼の2倍以上の硬さのため穴あけや切削が大変困難です。切削工具選定、電食防止処理、塗装、その他表面処理、著者が開発したCFRPの簡易成形技術・ワイヤカット放電加工技術、筆者が技術コーディネーターを務めた新潟県三条市のCFRP成形技術、明日からすぐ使えるCFRP技術を紹介します。
第二部 CFRPの量産プロセスRTM、LLD、PCM、SMCプロセスと問題点について
従来 炭素繊維を使った製品は身近なスポーツ用品(釣り具、ゴルフシャフトなど)から 始まり、近年では航空機で多用されるようになりましたが まだまだ ニッチと言われる限られた分野の高機能材料でありました。 そこにご存知の様にカーボンカーと言われる骨格をCFRPで製造されたニューコンセプトの自動車が販売されるようになりました。自動車産業における炭素繊維の使用は 2000 年頃から軽量化と強靭なボディー構造 を要求される Formula1などのレーシングカーなどでは部分的に導入されてきまし たが そのプロセスはVaRTM,PrePregなど生産性の高いプロセスとはいえませんでした。量産自動車というと年数千台以上、これは日当たり10台以上、 年2万台となると 日当たり80台以上の生産能力が必要とされ、さらに量産品質安定性が求められます。 これは従来の工法では とても対応できる数ではありません。 当然ながら車両用構造体に使用される材料は鉄と同等またはそれ以上の機械的物性、 温度安定性など過酷な使用条件をみたされないといけません。また原料の流通の安定 性、材料コストも非常に厳しい産業です。この条件に近い複合材料の組み合わせは炭素繊維に 樹脂自体が強靭で炭素繊維との接着性がよく熱安定が高い樹脂が必要となります。 これは従来 冶金にはじまり金属化学、溶接といった無機化学を中心とした技術による生産から、有機化学、高分子化学の反応をコントロールする工程を取り入れた生産にシフトが始まっているとも言えます。今回はコンポジット(複合材料)のCFRP(炭素繊維強化樹脂)の量産を視野に入れた場合のプロセス、生産性、設備などの説明とその問題点についてお話したいと思います。
第三部 炭素繊維強化プラスチックの二次加工製品への取り組み
自動車産業では、100年に一度の大変革期と言われています。一つ目は「電動化」、二つ目は「自動運転」、三つめは「コネクテッド化」、これら次世代自動車においても共通する課題は、車体の軽量化となります。これまで当たり前のように使われて来たスチールも超ハイテンによる薄肉化、アルミ化、樹脂化と材料置換が積極的に行われて来ています。その中でも高強度、軽量化の観点から炭素繊維強化プラスチックは、注目されています。今後更に環境変化が激しくなる中、知っておきたい加工技術の一つであると考えています。本セミナーでは、当社がこれまで取り組んできた研究開発をテーマごとに解説させて頂きます。