第1部 CNTのフレキシブル熱電変換材料としての可能性と課題展望
ナノ構造炭素とその熱電物性研究の紹介の後、いろいろ有益な特徴をもつカーボンナノチューブのフレキシブル熱電変換材料としての可能性と問題点についてお話します。
1.ナノ炭素とカーボンナノチューブの基礎
1.1 構造
1.2 電子状態
1.3 生成法
1.4 物性
1.5 応用
2.カーボンナノチューブの熱電物性
2.1 熱電物性の基礎(一般)
2.2 ナノカーボンの熱電物性
2.3 先行研究の紹介
3.高純度金属型・半導体型カーボンナノチューブの熱電物性
3.1 金属型・半導体型カーボンナノチューブの精製・分離技術
3.2 半導体型カーボンナノチューブの巨大ゼーベック効果
3.3 フレキシブルカーボンナノチューブ熱電変換デバイス
3.4 理論的考察
3.5 界面制御による熱電変換材料設計の提案
4.まとめ
□質疑応答・名刺交換□
第2部 フレキシブル熱電変換デバイスのための熱電材料への要求特性と有機系熱電材料における材料設計指針
近年盛んに耳にするようになったIoTの末端に位置する様々な孤立電子機器において、電力自給のためのエナジーハーベスティングデバイスは重要な要素である。人間が生活する限りは少なからぬ熱流が生じており、衣服や人間の住環境には必然的に内外温度差が生じている。この排熱を電気エネルギーとして利用できれば、センサーネットワークやヘルスモニターなどの用途における最低限の電子回路動作が維持できる。本講演では、フレキシブル熱電変換素子特有の材料への要求事項、我々および世界の研究動向から有望とされる材料群はどのようなものか、さらに、それらの一部として我々が研究している新原理/コンセプトについて講演を行う。
1.はじめに:エナジーハーベスティングと熱電変換
2.フレキシブル熱電変換素子のために要求される特性
2.1 熱電変換デバイスの基本構造
2.2 パワーファクターと無次元性能指数
2.3 様々な材料の導電率と熱伝導率
2.4 本当にZTだけで良いのか?
3.有機系熱電材料の探索結果の概要と有望と考えられる材料群
3.1 様々な理論式
3.2 低次元化やナノ構造形成のメリットと限界
3.3 有機系熱電材料探索結果の概況
3.4 どのような材料系が有望か?
4.当グループの材料戦略1:CNT間バイオナノ接合による熱・キャリア輸送の独立制御
4.1 基本コンセプト
4.2 コンセプト実現のためのタンパク分子
4.3 熱電特性
4.4 展望:繊維化による「発電する布」の作製
5.当グループの材料戦略2:低分子系有機半導体における巨大ゼーベック効果
5.1 ゼーベック係数の理論的限界
5.2 様々な有機低分子薄膜の熱電特性
5.3 実用可能性
□質疑応答・名刺交換□
第3部 新しい熱電変換材料の創製とインクジェット技術によるプリンティング熱電変換モジュールの製造
熱電変換技術は,ペルチェ効果やゼーベック効果を利用して,熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換する技術である.ペルチェ効果を利用した熱電冷却は,精密温度制御など既に私たちの周りで応用されている.さらに,ゼーベック効果を利用した熱電発電は排熱から直接電力を得ることが出来るため,近未来のクリーンエネルギー源として注目されている. 本公演では,まず熱電変換技術について解説した後,『熱電鉱物』という新しいコンセプトに基づいた環境に優しい新規熱電材料の開発について紹介する.さらに新しい発想に立脚した熱電モジュール作製プロセスの開発について概説する。
1.熱電変換とは何か?
1.1 ゼーベック効果とペルチェ効果
1.2 熱起電力の発生機構
2.熱電発電とエネルギーハーベスティング
2.1 現在のエネルギー事情
2.2 排熱からいかにして発電するか
2.3 熱電材料と無次元性能指数 ZT
2.4 環境に優しいものを作る.環境に優しく作る.
3.新しい熱電変換材料の創製
3.1 新しいコンセプト『熱電鉱物』
3.2 熱電鉱物テトラヘドライト
4.新しい熱電モジュール作製プロセスの開発
4.1 熱電モジュールの作成法
4.2 インクジェットプリンティング
4.3 『熱電インク』の開発
4.4 熱電変換技術と私たちの未来
□質疑応答・名刺交換□
[得られる知識]
熱電変換,エネルギーハーベスティング,廃熱利用,熱電材料,熱電鉱物,インクジェット印刷,熱電インク
第4部 中低温域を狙うフレキシブル熱電変換材料群と国内外の応用技術動向
世界で消費されるエネルギーのうち、約3分の2が未利用のまま排熱として地球環境に排出されており、その排熱の80%以上が200℃以下の中低温排熱エネルギーであるといわれる。このように未利用のまま地球環境に放出される熱エネルギーを、直接電力に変換する技術として注目を集めるのが、フレキシブルな熱電変換材料である。例えば、住宅等の身近な排熱や生体の体温を電気に変え、消費電力の小さな電子機器の電源として活用することが考えられている。熱電変換材料としては無機材料が広く知られているが、レアメタルや毒性のある金属を使っている場合もあるが、硬くて重ければ、日常生活での普及を図るには不向きと考えられる。これに対して、フレキシブル性をもつ熱電変換材料であれば、軽量性、加工性、柔軟性といった特性をもたせることが可能である。しかも、レアメタルを使わないものであれば、低コスト・低環境負荷といったメリットもある。しかしながら、有機系材料は無機系材料に比べ、熱電変換性能が劣っており、さらなる熱電変換性能の向上が求められている。ここでは、中低温領域に適したフレキシブルな熱電変換材料の開発動向ならびに、その特許出願動向について俯瞰する。
1.はじめに ~「再利用可能な熱」で、省エネ&省CO2の実現を目指す
2.中低温排熱(200℃以下)の利用をめざす熱電変換材料 ~フレキシブル系で、利用可能範囲の拡大を狙う
3.フレキシブル材料の熱電変換性能向上を狙う設計指針 ~鎖状導電性高分子の配向と超格子概念
3.1 導電性高分子系
3.2 高電気伝導度性をもつPEDOT系
3.3 材料系の不安定性と強酸性を避ける系
3.4 高電気伝導性をもつCNT系
・CNTとPEDOT:PSS の組み合わせ
・PEDOT:PSS(PHSS1000)とSW-CNTの組み合わせ
・CNT-高分子複合材料系
・n型CNT系を実現 ~CNT/C-Dps(Fe)系
・s-SW-CNT系で性能向上
・Co内包CNTでn型CNTを実現
3.5 ナノ材料系
・超格子概念の導入(電子系とホノン系の独立制御)
・PEDOT:PSS+無機ナノワイヤー
4.熱電変換技術に対する欧米日の動向
4.1 欧州の動向
・H2ESOT プロジェクト:
Waste Heat to Electrical Energy via Sustainable Organic Thermoelectric Devices
・NanoCaTeプロジェクト :Nano-carbons for versatile power supply modules
・大面積透明薄膜熱電デバイス(スマートウインドウとフレキシブル応用)
4.2 米国の動向
・IoT用無線センサー電源に熱発電を利用 ~課題は薄膜化と小型化
・バッテリー不要のウェアラブル医療モニター ~電源はウェアラブルデバイスの重要課題
・熱発電と振動発電の機能を備えたタイヤ
4.3 日本の動向
・非フレキシブルでは、先行製品が存在 ~熱発電腕時計
・未利用熱エネルギー革新的活用組合 ~フレキシブル材料に取り組む富士フイルムも参加
4.4 韓国の動向
・ウェアラブル熱発電
5.新たな熱電変換の登場
・スピンゼーベック効果 ~金属系、磁性絶縁体、磁性体塗布プロセスの実現
6.まとめ
□質疑応答・名刺交換□