第1講 振動発電技術の現状と今後の展望
化石燃料の枯渇や地球温暖化さらには原子力発電の安全性への懸念を背景に、風力発電や太陽光発電を代表とする大規模な環境発電の開発が加速している。一方で、我々の身の回りに存在する環境エネルギーから、比較的小さな電気エネルギーを獲得する“エネルギーハーベスティング”に関する関心が、近年、国際的に高まりつつある。この技術の最大の特徴は、環境エネルギーが存在している限り半永久的に電力を供給することができる点にあり、電池交換や電気配線を必要としないデバイスへの応用が期待されている。現状における発電特性はまだまだ不充分であると言わざるを得ないが、すでに欧米を中心に、発電道路としての実用化をはじめ、無線通信技術と組み合わせたタイヤ空気圧監視システムや壁スイッチなどの応用が報告されており、今後、発電特性の向上と電子部品の低消費電力化が相まって進めば、応用の可能性はより高まると予想される。本講演では、エネルギーハーベスティング技術の概要、研究動向、ならびに我々が取り組んできた振動発電エネルギーハーベスティングに関して、その特徴と定量的扱いについて実施例を交えながら解説する。
1 エネルギーハーベスティングとは?
1.1 定義
1.2 エネルギーハーベスティング技術を用いた製品の変遷
2 エネルギーハーベスティング開発の現状
2.1 エネルギーハーベスティング技術の種類と特徴
2.2 エネルギーハーベスティング技術紹介
2.3 製品開発動向
2.4 従来型発電との相違と市場性
3 振動発電技術の研究事例
3.1 振動発電技術群の原理・特徴の比較
3.2 圧電体を用いた振動発電技術
3.3 圧電ポリマーを用いたエネルギーハーベスティングシステムの紹介
3.4 より大きな発電量を得る方法
4 エネルギーハーベスティング技術の課題と将来展望
4.1 ユビキタスネット社会実現に向けた国内・国際動向
4.2 今後の課題
第2講 エネルギーハーベスト(環境発電)の開発と実装
エネルギーハーベスティング(環境発電)とは、光・熱(温度差)・振動・気流など様々な形態で存在する自然エネルギーから獲得した微小電力で動作できる電子デバイスを実現する技術である。特に最近話題となるもののインターネットIoTにおいては、電池交換不要無線センサの実現には欠かせない技術といえる。本講座では、ハーベスティング発電デバイスの性能を検討する上で、パワーマネジメント回路を含めた低消費電力無線通信システムの開発と実装について詳しく解説する。
1 エネルギーハーベスティングの実装
1.1 エネルギーハーベスティング技術の構成
1.2 発電デバイスの性能と特性
1.3 利用できる電力の見積もり
2 低消費電力無線通信技術
2.1 ZigBee、BLE、EnOceanなど
2.2 低消費電力化の無線通信仕組み
2.3 低消費電力無線通信の開発
3 パワーマネジメント回路
3.1 電力パワーマネジメント回路
3.2 低消費電力の電源回路
3.3 微小電力の貯蓄
4 エネルギーハーベスティングの開発
4.1 低消費電力マイコンとFWの開発
4.2 低消費電力AD変換とセンシング技術
4.3 消費電力の測定