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近年、二輪車の電動化は先進国と新興国の両方で進展しているが、その取り組みの目的は異なる。先進国はカーボンニュートラル政策の一環としてモビリティの電動化を推進する一方、新興国にとっては、環境面やエネルギー安全保障の観点に加え、経済成長とともに急増する石油輸入による財政悪化に歯止めをかける役割も担っている。インドやインドネシアなど世界の主要二輪車市場国が電動二輪車政策を積極的に導入しているのは、二輪車によるガソリン消費量が他国に比べて圧倒的に多いことが背景にある。しかし、一般の消費者にとっては、バッテリー劣化によって価値が棄損する電動二輪車より、航続距離が長くて使い勝手がよく、長期間資産価値が残るガソリンエンジンを搭載した二輪車を選択する傾向が強い。先進国でも、補助金などで電動二輪車の需要を喚起しているが、バッテリー搭載スペースが限られるモーターサイクルの電動化は限定的となっている。
ロシアのウクライナ侵攻によって世界的にエネルギー価格が高騰する中、脱化石燃料の動きが加速することが見込まれるが、電動化に必要なニッケルやリチウムなどの原材料化価格も高騰し、バッテリーや電磁鋼板などの供給不足も懸念されていることから、バイオ燃料や合成燃料の動きも活発化している。
本講演では、各国の政策や二輪車市場の特徴に加え、激変する世界情勢を踏まえながら、様々な視点から二輪車電動化の将来を展望する。