~バイオモノづくりはCO2を原料にする時代へ~
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1.二酸化炭素資源化の必要性
1.1 カーボンニュートラル、ネガティブエミッション
2050年のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出を実質ゼロに)の実現にむけ、ネガティブエミッション(排出CO2の回収、除去、資源化)技術の開発が急務である。
1.2 日本における「バイオマス・セキュリティ」の重要性
温室効果ガス問題に加え、日本には(将来的には世界的にも)有用バイオマスが不足しており、その多くを海外からの輸入に頼っている。現在サステイナブルな技術とされているバイオ燃料やバイオポリマーの生産も、海外産の食糧から生産していたのではサステイナブルとは言えない。
2.マテリアル技術とバイオ技術の融合
2.1 マテリアル技術による二酸化炭素資源化技術
マテリアル技術によるCO2資源化の研究は電解CO2還元や人工光合成など盛んに進められている。これらの中にはすでに植物の効率を超える技術も報告されているが、有用有機物の選択的合成は困難というデメリットがある。
2.2 バイオ技術による二酸化炭素資源化
植物や藻類など光合成生物を利用したCO2資源化は多種多様な有用有機物の合成が可能という大きなメリットを持つ。一方で反応速度や反応効率の観点ではマテリアル技術に太刀打ちできない。
2.3 マテリアル・バイオ融合の必要性
上記の課題から、効率的なCO2資源化にはマテリアル、バイオのメリットを併せ持つ技術の構築が有用であろう。具体的には、光エネルギー変換や単純なCO2固定反応をマテリアルが、複雑な有機物の選択的合成をバイオが担うような融合型技術の開発が必要である。
3.非光合成微生物による二酸化炭素資源化
我々のグループではマテリアル・バイオ融合型の技術により「現在化石燃料や栽培作物から生産しているあらゆるもの(燃料、ポリマー、飼料・食糧など)をCO2から合成可能な技術」の開発を目指している。本CO2資源化技術は、微生物に供給するエネルギー・炭素源の違いから大きく3つに大別できる。
3.1 電気合成微生物の利用
マテリアルから供給される電力をエネルギー源としCO2から有機物を生産可能な電気合成微生物を利用した技術。工数が少ない分効率は高いが反応性が良い微生物の開発等が必要である。
3.2 水素酸化細菌の利用
電解還元により生産可能な水素(やCO)を微生物のエネルギー源として供給する技術。紹介する中では最も実用化に近いフェイズにあるが、効率的な微生物の開発やガス基質の供給法など課題も残されている。
3.3 触媒合成有機物を代謝する微生物の利用
電解還元や触媒反応によりC2以上の有機物(ただし混合物であったりそのままでは使用できない)を微生物に供給する技術。触媒開発、および非天然有機物を含むためその資化微生物の探索・開発が必要であるが、トータルの有機物生産ポテンシャルは最も高い。
□質疑応答□