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ICAO(国際民間航空機関)は、2027年に世界中の航空会社にSAF(持続可能な航空燃料)の利用を義務付けている。現在の技術においては、エネルギー密度を求められていることから、電気、水素によって航空機を飛ばすことは現実的ではなく、廃食用油等からつくったバイオ燃料以外にコスト的にも、技術的にも脱炭素を実現できない。そのため、SAFは確実な需要が見込まれている。それに対して、輸入木材を利用したバイオマス発電は、円安による原料価格の高騰、輸入材によるバイオマス発電への政府の補助の縮小により、新規のバイオマス発電は逆風に直面している。
2025年には、三菱商事とENEOSが、ハワイにおいてSAFの生産を開始する。トヨタ、出光興産、ENEOS、三菱重工業が、現在も自動車の中心となっているガソリン車の脱炭素化への方法としてバイオエタノール開発の検討を始めた。従来の木質チップ、木質ペレットを燃料とするバイオマス発電に加えて、トウモロコシ、廃食用油、建築廃材からジェット燃料の生産、さらに農業残渣物をガス化することによるバイオガスからメタン(CH4)を生産するメタネーションへと対象領域が拡大している。脱炭素が、航空機をはじめとした多様な分野に求められるようになり、現在の技術では電動化が難しい航空機の脱炭素実現のために、フィンランドのネステをはじめとした海外企業のみならず、日本のENEOS、出光興産、コスモ石油をはじめとした石油企業、日揮、IHI等も、SAFの生産に本格的に取り組み始めている。2024年7月には、ENEOSが日本航空にSAFを販売する契約を締結した。JAL(日本航空)とANA(全日本空輸)は、2030年にジェット燃料の10%をSAFにする計画を掲げている。脱炭素に積極的な欧州諸国も、バイオマスを原料とした合成燃料による内燃機関を2035年以降も容認する。バイオマス燃料の特徴は、従来の航空機、船舶、発電所、トラック等を基本的にそのまま利用可能で、巨額の設備投資を行うことなく、炭酸ガス排出削減ができることにある。国連の専門機関ICAOは、2022年10月に航空機が排出する炭酸ガスを2050年までに実質ゼロとする目標を採択している。しかし、現在の蓄電池の技術によっては、航空機を電気で飛行させることは難しい。そこで、廃食用油、都市ゴミ等を原料とした持続可能な航空燃料(SAF)の生産に、欧米各国がしのぎを削っている。発電部門においても、2025年2月に閣議決定されたエネルギー基本計画による2040年度の電源構成において、再生可能エネルギーの割合を4割~5割に引き上げ、バイオマス発電の発電量の割合を5%~6%とする意欲的な目標を掲げている。脱炭素時代に期待されているバイオマス発電は、燃料の国内外からの安定調達、日本国内の森林利用と林業振興が求められている。さらに、産業廃棄物、都市廃棄物を利用したゴミ発電等の利用も2050年に向けて、大きな期待がもたれている。バイオマス(Biomass)とは、生態学的にいうと生物資源の存在量の総量を意味する。資源エネルギーの立場から考えると、エネルギーに変換できる生物の量、農業・林業廃棄物、畜産廃棄物、さらに産業廃棄物、都市廃棄物という幅広い資源も含む。バイオマスは、①資源枯渇がない再生可能エネルギーであること、②太陽エネルギーを起源とし、資源量が莫大であること、③あらゆる地域に存在し、地域偏在がないこと、④エネルギー源となる生物資源が、生育の際に光合成により大気中の炭酸ガスを吸収することから、燃焼によって炭酸ガスを排出しても、全体としては大気中の炭酸ガス濃度は変わらない、カーボン・ニュートラル(炭素中立的)となること、⑤既存のインフラストラクチャー、発電機、エンジンを利用することが可能であり、巨額の新規投資を必要としないこと、等の数多くのメリットを持っている。2012年7月1日から施行されている固定価格買取制度においても、1キロワット時当たり24円という、政策的に高値による買い取りを保証されていた。そのため、バイオマス発電の認定量は、2024年3月末時点において、太陽光発電、風力発電に次ぐ、1,070万キロワットに達している。バイオマス発電は、平均稼働率が80%程度と、石炭火力発電、原子力発電と並ぶベースロード電源として期待され、林業、運輸業をはじめとした地域経済の活性化、雇用の創出につながることが期待されている。しかし、バイオマスは、必ずしもライフ・サイクルで見て、地球環境に優しくないという見方も生まれつつある。①円安もあって、木質ペレット、パームヤシ殻(PKS)等を国内、海外から、安価かつ長期・安定的に調達することが難しい。②バイオマス発電プロジェクトの過半は、海外からの木質ペレット、PKS、パーム油の輸入に依存し、エネルギー自給率の向上につながらない。③米国、アジアからの木質ペレット価格も、世界的な石炭火力発電からバイオマス発電への切り替えにより、燃料争奪戦が過熱して、上昇している。④カナダ等の森林資源の破壊も無視できない。また、パーム油生産のために、熱帯雨林の伐採、食糧価格の高騰という弊害も顕在化している。しかし、2030年度の電源構成において、バイオマス発電が、電源全体の5%を担い、石炭と混焼することによって、既存の石炭火力発電が排出する炭酸ガスの排出削減にもつながる効果がある。国内の間伐材の活用、育成の早い植物の栽培による地方経済の活性化と雇用の創出、廃食用油、藻から生成されるバイオ・ジェット燃料の量産による通常の航空機活用の炭酸ガス排出削減等、さらなる普及が期待されている。日本企業にとっても、高齢化と人手不足に直面する国内林業の再生、地産地消エネルギーの創出、海外におけるバイオマス発電事業の展開、燃料の安定調達、発電設備の大型化による発電コストの低下等、さらなる飛躍が期待されている。日本の三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠、丸紅をはじめとした総合商社、住友林業、三菱地所等も、海外からの木質ペレット等の安定調達ビジネス、廃食用油の安定調達、バイオ液体燃料の調達ビジネスに乗り出し、新規参入企業も、海外からのバイオ燃料の独自調達を強化している。バイオマスに係わる最新動向と今後の事業戦略について、資源エネルギーの第一人者が分かりやすく解説する。