第1部 進化する建築・住宅向け断熱技術の展望と課題 (10:00~11:20)
地球温暖化対策として、住宅・建築物では、省エネ基準適合義務化や低炭素建築物推進などの施策のもと、より高いレベルの性能が求められつつある。こうした高性能化の流れは海外も同様であり、 特に断熱改修を視野に入れた薄くて高性能な断熱材料の技術開発が進められてもいる。このような国内外の施策・研究開発動向のほか、住宅断熱特有の内部結露問題への対応、放射伝熱や熱容量の評価の省エネ基準適合の可能性などについて、その概要を説明する。
1.改正省エネルギー法等の流れ: 省エネ法改正内容の概要、低炭素基準の内容など
2.海外の省エネルギー基準 :おもにヨーロッパの基準(部位別U値、外皮平均U値、EPCs等のラベリング制度)
3.海外の次世代断熱材の状況:①VIPs、②AeroGels、③VIMs、④NIMs、⑤DIMsの概要
4.開口部と省エネルギー:暖房エネルギーゼロ化を進めるための鍵
5.ゼロエネルギー窓の研究動向:クロミック技術を中心とした技術開発動向
6.海外の断熱技術の国内活用のための要件:Japan-Canada R&D workshop等の事例をもとに
7.住宅の断熱外皮の成立要件としての内部結露防止:防湿層、透湿抵抗比、部位別リスクなど
8.遮熱材料の活用:断熱塗料・遮熱塗料の断熱性能評価
9.通気層の熱的効果:通気層の遮熱・断熱効果について
10.熱容量の活用と省エネルギー:特にコンクリートやPCMなどの省エネルギー評価
□質疑応答・名刺交換□
≪得られる知識≫
住宅断熱に関する国内外の施策・研究動向、 住宅に特有の断熱化の注意点・課題
第2部 大型化と低コスト化を目指すセラミックス系ナノ多孔体技術による超耐久真空断熱材料(11:30~12:50)
住宅の省エネは今後ますます重要であり、断熱性能の向上が重要な鍵となる。そこで、断熱性能の向上を目指してナノ多孔質構造を持つセラミックス粒子を用いた真空断熱材の開発に取組んでいる。ナノ多孔質粒子を用いることで、センイ系に比べ真空劣化に対する耐久性が非常に高くなる。本研究はNEDOの「マルチセラミックス膜新断熱材料の開発(2007~2011年度)」に基づくものであり、プロジェクト概要についても述べる。
1.はじめに
2.断熱性向上の手法
3.ナノ多孔質構造をもつ断熱材
3.1 ナノ多孔質セラミックス粒子を用いた真空断熱材
3.2 エアロゲル法によるナノ多孔質透明セラミックス
3.3 ナノ構造セラミックス遮熱コーティング
4.真空断熱材の長期性能評価
4.1 真空劣化評価手法
4.2 30年後の断熱性能の予測
5.断熱材の実証試験
5.1 試験概要
5.2 省エネルギー効果
6.まとめ
□質疑応答・名刺交換□
≪得られる知識≫
真空断熱材 / 芯材(粒子系、繊維系) / 熱伝導率の真空度依存性 / 長期性能 / 真空劣化 / 耐久性 / 省エネ効果
第3部 ~ポスト シリカエアロゲルなるか、高ハンドリング性の透明断熱素材~
有機無機ハイブリッド多孔質体の開発と多用途断熱材への展望(13:40~15:00)
透明で断熱性能に優れたシリカエアロゲルは、製造に超臨界乾燥過程を必須とすること、力学強度が極めて低く成型断熱部材として使いづらいことが、実用化を阻んできた。有機無機ハイブリッド組成から得られるエアロゲルは、可逆的な圧縮変形が可能でハンドリング性に優れ、大気圧乾燥プロセスでの製造が可能である。また、わずかな減圧で高真空断熱と同等の熱伝導率を実現できる。シリカエアロゲルに匹敵する光学特性、断熱特性をもつこの新しい材料の、合成、物性、断熱特性について、基礎から解説する。
1.エアロゲルとは
1.1 湿潤ゲルの乾燥とキセロゲル・エアロゲルの生成
1.2 乾燥過程に影響を及ぼす因子
1.3 超臨界乾燥による低密度材料の作製
1.4 エアロゲルの応用分野と技術的課題
2.シリカエアロゲルの作製と物性
2.1 ケイ素アルコキシドの加水分解重縮合
2.2 シリカオリゴマーの重縮合とゲル化
2.3 湿潤ゲルの熟成と乾燥操作
2.4 透光性エアロゲル作製に必要な条件
3.有機無機ハイブリッドエアロゲル
3.1 3官能アルコキシシランのゾル-ゲル反応
3.2 透明で均一なゲルの作製方法
3.3 微細構造に及ぼす界面活性剤の影響
3.4 可逆的圧縮変形のメカニズム
3.5 常圧乾燥による低密度キセロゲルの作製
4.エアロゲルの熱伝導率
4.1 多孔質材料の熱伝導率に影響を及ぼす因子
4.2 気体の平均自由行程と多孔質材料の細孔径
4.3 可視光透過率と輻射の影響
4.4 ガス圧に対する熱伝導率の変化(真空断熱との比較)
5.エアロゲルの実用的な利用
5.1 ソーラーヒートパネル
5.2 高断熱・透光性窓
5.3 IH調理用耐熱断熱食器
□質疑応答・名刺交換□
第4部 断熱材の評価技術 ~熱伝導率測定の不確かさおよび長期性能の評価~(15:10~16:30)
近年、真空断熱材など、従来の断熱材に比べ熱伝導率の低い材料の開発が行われているが、これらの材料の開発や普及には、その性能を適切な方法で評価することも重要である。本講演では、断熱材の断熱性能の評価技術に関する現状と、これらの技術で真空断熱材などの測定を行う上での課題について解説する。また、断熱材の長期性能を評価する上での課題や評価事例などについて紹介する。
1.断熱材の評価技術
1.1 熱伝導率の測定方法(保護熱板法)
1.2 熱伝導率の測定方法(熱流計法)
1.3 熱伝導率の測定方法(その他)
1.4 熱伝導率以外の測定方法
2.熱伝導率測定の不確かさ
2.1 不確かさについて
2.2 不確かさの推定
2.3 不確かさの改善
2.4 真空断熱材の熱伝導率測定の課題
3.長期性能の評価
3.1 経年変化要因
3.2 測定事例
3.3 規格動向
3.4 現場での評価技術
□質疑応答・名刺交換□