【第1部】 高分子のガス・水蒸気透過メカニズムと制御方法
高分子バリアフイルムは、単独あるいは複合化することにより、食品から電子デバイスまで異なる要求を満たす包装材料として今日まで用いられてきた。バリアという物質を通さない性質に対して、高分子は多かれ少なかれ気体や蒸気を透過させる性質を持っている。単独の高分子フイルムでは対応できないハイバリア領域は有機EL素子の封止や太陽電池の保護膜などへの展開が期待され、様々な手法での複合材が開発されている。また、バリア性の向上とともに検出限界が大きく改善された新しい評価技術も検討されている。本講座では高分子フイルムのガスおよび水蒸気透過現象を溶解拡散機構により概説し、複合材であるハイバリア膜の特徴およびハイバリア向けの評価技術について解説する。
1. 身近な包装材料
2. 多孔膜と非多孔膜
3. バリア性の原理
3-1 フィックの法則
3-2 溶解過程
3-3 拡散過程
4. ガス遮断性と防湿性
5. バリア性複合材料
5-1 多層膜
5-2 有機無機複合膜
5-3 アクティブバリア膜
6. バリア膜の評価法
6-1 評価法分類
6-2 規格化された評価法
6-3 その他の新しい評価法
【第2部】 バリアフィルム・容器のバリア性測定技術と実践評価について
バリアフイルム評価において、測定技術や測定手法によって、測定結果が大きく違い、数値の取扱いに混乱が生じている。この現状に対応するにはどのような方法があるか、事例に基づいて述べる。容器形状でのバリア評価ニーズもここ2、3年急激に増え、最終製品までのトータルバリア保証が認識されるようになってきた。実際の測定方法を測定治具と共に、一般的なバリア数値を含め紹介したい。最新の高温試験における水蒸気バリア性(85℃85%RH)、酸素バリア性(100℃ dry)測定法についても述べる。
1. 最新のバリア性評価におけるトピックス
2. 等圧法測定装置の測定原理と特長
2-1 IR法
2-2 RHセンサー法
2-3 クーロメトリック法
3. バリア評価に影響をおよぼす因子と対策
3-1 温度・湿度
3-2 テストガス透過方向
3-3 貼り付けグリース
3-4 各種高分子材料、ハイブリッド膜のバリア性能表
4. 超高感度水蒸気試験装置AQUATRAN2の紹介
4-1 測定原理と性能使用
4-2 界面透過と端面透過の測定方法
4-3 定常状態の判断基準
5. モコン等圧法と差圧法及びCa法における測定結果の取扱い
6. 実践容器測定の事例と測定方法
6-1 ペットボトル(酸素、炭酸ガス)
6-2 機能性医薬品包装(プレフイルドシリンジ、PTP、輸液用ソフトバック、バイアル、コンタクトレンズパック、眼薬容器)
6-3 機能性フイルムを用いた紙容器(バリア紙缶、酒パック、果汁パック)
6-4 各種キャップのシール性とバリア(果汁、焼き肉たれ、ジッパー)
7. 高温試験の測定方法と測定結果の取扱
7-1 水蒸気バリア試験
7-2 酸素バリア試験