炎症性腸疾患(IBD)の原因は十分解明されておらず、根本的な治療法がない。近年、患者数は急激に増加し20万人を超え、内科医であれば日常診療で遭遇することの多い難病の1つである。また、好発年齢が青壮年層で、症状が良くなったり悪くなったりすることが多く、QOL(quality of life)を著しく損なう可能性がある。
生物学的製剤の登場以降、IBDの治療成績は飛躍的に向上し、治療目標は症状の改善・消失から粘膜の傷の治癒へと一段高い目標へ変更されたが、生物学的製剤の投与初期から効果のみられない症例や徐々にその効果が減弱する症例が存在し、完全治癒には至っていない。
本講座では、IBD診療に必要な基礎知識や新規治療法の開発状況含めたトピックスについて概説するとともに当院での診療の実際と患者アンケート調査結果を紹介する。